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January 20, 2008

てのひら怪談 感想その9

 最後です。当分感想書きはしないぞ。さすがに飽きた。(笑)読んでいただいた方はもっと飽きたことでしょう。長い間お付き合いありがとうございました。この記事を書いている最中、ノートパソコンのプラグがゆるんで、電源落ちました。ビビりました。

 週刊てのひら怪談に、次回拙作「回帰」と立花腑楽さんの「龍宮の使い」が掲載予定…らしいです。29日に、更新??(推定)。

 ・自分のメモ用に、お気に入りに★印をつけてます。「良い」ではなく「好き」であることをご承知置きください。

お化けの学校 田辺青蛙
 大変ですなあ、あちらも。(笑)このタイトルは、どうしたって「ゲゲゲの鬼太郎」の主題歌を連想するけども、その期待を外さぬまま、違うテイストが出来上がっている。ちなみに、世代的には「吉幾三」なのだが、子供のころから熊倉一雄さんのお声が好きなので、そちらに一票。

神を見る人 林不木
 うわー。すごい「濃い」です。老人の描写、やけに手についての記述が多いと思ったら、最後にそんな。語り手の雰囲気もなにかイヤな感じ…偉そうというか、自分だけは不幸に遭わないと思い込んでいそうな…も妙に不気味。

魚怪 勝山海百合
 これは読ませますね。この最後の一文で、すべてバラバラになったような気がして、しばらく呆然としてしまった。

猫笑 不狼児
 前作もそうであるけれども、「男の執着」が描かれている。こちらはさらに狂気がかっていて、つかみどころがありそうでつかみきれない状況と相まって、不気味。

ブラキアの夜気 小栗四海 ★
 まずタイトルのリズムが好き。このエキゾチックな雰囲気は、1、2を通して独特で印象的だ。冒頭の文は、まともに読もうとすればするほど意味がわからなくなるのだけども、それ自体がこの話の雰囲気そのものだ。
 白と黒がくっきりと深い。

ボコバキ 池田和尋
 畳み掛けるような長い一文がボコバキです。(?)描かれているボコバキに嫌悪感はさほどなく(それが主題ではないのだろう)知らないままの人、知ってしまった人、知らせた人の三者を、読者が俯瞰することによって苛立ちや嫌悪を抱くようなカタチになっている。そこには色々なアイロニーも含まれていて……。

大樹 向井野海絵
 少々アニメチックな印象なのだけども、空気や匂いも丁寧に描かれているのはよいな。雰囲気を描くことには成功しているけど、内容も作品も恍惚としすぎているような。恍惚とした内容な上に、書き手のナルシシズムもみえてしまうと、ちょっとツライ。

呪いと毒 勝山海百合
恐ろしいのは毒物ではなく、それをどんな人がどんな意図を持って使うか、ということだ。雰囲気たっぷりと書いてあるけども、説教臭い感じがなくもない。

祭りの夜 不狼児 ★
 繰り返される「長い」の言葉が、非常に効果的、蛇の長さや果てしない交わりを強く印象付けられた。
異類婚姻譚は珍しくないけれども、交わり自体を想像したときに漠然と思っていた雰囲気(その快楽とか妖しさとか)を見事に表現している。

寄り来るモノ クジラマク
 前作を読んだあとだと、なんだかスケベそうな祭りを想像してしまうのですが。(笑)でもまあ、祭というのは、結婚相手を選んだり、豊穣を願ったり、なんだかんだと性的なニュアンスも持っていたりするわけで。(言い訳)
 「海蛇」と呼んでいるそれについて、それ以上追求しないのが暗黙の了解、という感じが暗くて怖い。
 
あめ玉 田辺 青蛙 ★
 少女同士の、媚を売るようなじゃれ合い。その年頃をとうに過ぎた者から見ると気恥ずかしく、目を逸らしたくなる。そこにその年代だけのエロスがあるのを知っているから。

マンゴープリン・オルタナティブ 不狼児
 あっはっは!(笑)この壮大さ。空海とミサイルって。
 でも、シャレにならないことがそこかしこに潜んでいて、笑いながら怖くて仕方ない。


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January 16, 2008

てのひら怪談 感想その8

週刊てのひら怪談の更新がはじまりました。『てのひら怪談2』の作者による新作怪談が毎週2編づつ公開されます。

てのひら怪談2レビューリスト さらに追加版
 秋山真琴さん
 酒月茗さん
 松本楽志さん
 根多加良さん
 峯岸さん
 マンジュさん
 間倉巳堂さん
 添田健一さん(全作じゃないよ)
 水棲モスマンさん
 レビュー(嘘)だそうですが、創作者としてはうれしいお返事です。
 「幽鬼の源」
 「てのひら怪談2」感想用ブログ


山の中のレストラン 白ひびき
 尿意と父の愁いた言葉が腹にずしんと堪えます。レストランについて父が何か知っていそうだけど、結局何も聞けないんだろうなぁ。

田んぼ 痛田三
 ここまでいかなくとも、たった一つのゴミがゴミを呼ぶのは、事実ですな。
 段々と加速するゴミに合わせて、描写や書き方も工夫が凝らされている。狙い過ぎというか、テクニカルすぎな気もしなくはないがテンポが弛んだ途端にこの結末。巧さとやりきれなさに唸りました。

とある民宿にて 梅原公彦
 旦那と主人公が女将に弄ばれているだけにも見えたり、それぞれの言い分に矛盾があるようにも読める。でも女将、旦那、客である主人公、皆それぞれの現実を生きていて、その言い分はそれぞれ「正しい」のだという気もする。
 翻弄されたのは、読者かも。

夜釣りの心得 ヒモロギヒロシ
 えーと、これは若干、判断に困った。こーいう〆方は、アリなのかしらん。こんな怪異が起こるよ、恐ろしい目に遇うよ、と脅かされた……だけ、という話。
 この話を聞かされたこと自体、怖い体験だったということなんだろうけど。民宿の主人の話も、怖い話としてはステレオタイプだし。まぁ、ここは奇をてらうようなエピソードである必要はないと思うけど。

食堂にて 斜斤
 ナンデスカ、ソノ「棒状のモノ」って。
 人見知りのせいか、知らない店に入るのが、とてもイヤな時がある。とくに地方の観光地の食事処。店の人が胡散臭いんじゃないか、と懸念する。そんな不安を現実にしたような話で、参った。
 ちなみに、愛想がないのも困るが、必要以上に人懐っこい店員はもっと苦手だ。

料理屋 沢井良太
 どういう経緯で潰れたのかはわからないけども、人の怨念というより、料理屋そのものとか道具の念が見せた怪異、という印象だった。
 段落がないのだけど、臨場感があってよかった。

シルエット 斜斤
 これはなぜかウキウキしてしまうな。野坂昭如作詞「おもちゃのチャチャチャ」じゃないが、人のいない隙に、モノたちがどんな時間を過ごしているかと考えると楽しい。……これも付喪神とかアニミズムみたいな感覚が染み込んでいる証だろうか。

休憩室 貫井輝
 怪談という枠で描かれているけども、現実すぎる現実であるよな、こーいう過酷な労働状況。食事や睡眠もままならない日々って人間として以前に、生物としてちゃんと生きてないじゃん!どうしてこういう労働をしなくちゃいかんことになっちゃったんだろ、世の中。
 黒澤明の「天国と地獄」の赤い煙じゃないけども、バナナの黄色だけが、やけに鮮烈。

心臓カテーテル室で やまぐちはなこ
 科学的であるのは当然だけども、同時に人間臭くあって欲しいです、お医者さんには。さびしいエピソードでもあるのだけど、ほっこりともする、不思議な読後であった。
 うーむ、でも「子供が走り回ってた」などと患者に言われて、「嗚呼この人は」といちいち思ってしまうのは、ツライだろうなあ。
 
茉莉花 我妻俊樹
 うわ…。「てのひら怪談2」に掲載された拙作も人形モノだったけども、もちろん人形は大の苦手です…。リカちゃん人形などで遊んだことがない。
 「モデルがいる人形」だけでも怖いのに「そのモデルが自殺」しているだなんて…。ああ、もう。怖すぎて書くことがない。(笑)
 人形がなぜ怖いかって、「異界の者の殻だけ」に見えるからで、ご本人は異界からこちらをじっと観察しているような気がするのだ。本人が見てるのに平気で愛でたり着せ替えたり写真を撮ったりなんて、畏れ多くてできない。つまり、強く感情移入しているという点では好きな人と変わらないんだと思う。

赤い着物の女の子 大野尚休
 うーん、こちらの興味のない自慢話を聞かされたような気分。「例の話」そのものを全然察知も推察もできないので、ナンノコッチャ。という感じである。今ちょっと調べたところ、座長というのはどうやら稲川さんのことであるらしいが。
 加えて「視た」という書き方とか、一人称が「自分」であることとか、どうも肌に合わない。

カオリちゃん 須吾 托矢
 童謡調。童謡っておっかないのが多いよね。マザーグースもそうだし、洋の東西や時代を問わずこーいうのはあるもんなんだろう。
 だんだん「なくしもの」がでっかくなるのが、イヤですねー(褒めてます)

少女と過ごした夏 伊藤寛 ★
 ああ、これはあざとい。狙いすぎだろ。けど好きだ。(笑)女の子ならば幽霊だろうがなんだろうが(ヲイ)
 ちゃんと「さよなら」が言えなかったからこそ、忘れがたい思い出になるってこと、実際にあるよなあ。私は恋と猫にあります。(笑)この話では猫のことを思い出した。すまんな、初恋の君よ。

止まない雨 暮木椎哉
 雨と幽霊の憂いとか儚さとかが合いまって、美しい。しっかし、こーいう幽霊はたいがい美人さんだよなあ。いや、私が書くときもそうするけども。(笑)
 こーして過去に現実に起こった事故と、体験した幽霊や怪異を結びつけることで、「同情」したり「納得」するわけだけども、納得したいというのは、どういう心理からなんだろう。結局、怖い思いをした己を慰めるため、ってことなのかな。経験がないからわからないけど。


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January 15, 2008

てのひら怪談 感想その7

週刊てのひら怪談の更新がはじまりました。『てのひら怪談2』の作者による新作怪談が毎週2編づつ公開されます。


いこうよ、いこうよ 久遠平太郎
 中年オヤジ氏は、誘いを断われなかった、のだろうか。その心中を察すると哀しくなる。
 んーでも、若干不快感を伴う作品だった。なんだろ、やっぱり安易に作中で殺さないでほしいというか。いや、でも作中で人が死んでも不快ではないものもあるし……「中年オヤジ」をばかにしているように見えるからかなあ。うーん、もやもやする。
 怪談だからその中で起きる現象自体が不快なのはアリだけども、怪談だからこそ、書き手の価値観とか死生観に疑問を持ってしまうと、あまり気分がよくないようだ。

夜寒のあやかし 江崎来人
 あー。作中の柳瀬川はうちの近くも流れている川でして。こーいうマイナーなのに、自分には馴染みがある地名等々が出てくると、非常にナンだね。(笑)しかも川。東上線の志木や柳瀬川とは少し距離があるのだけども、川って繋がってるじゃん?(笑)
 2のときに、名前や地名を××とかイニシャルにすることに疑問を持った作品がいくつかあるけども、実際にある名前、実際にありそうな名前をつけることで得られる「効果」ってあると実感した。

東京駅の質問 君島慧是
 こーいう、タイムトリップを予感させる作品に、弱い。最後の一言が堪りません。
 といいつつ、鹿鳴館と東京駅が「友」なのは、ちと不自然な気がしないでもない。コンドルと辰野は師弟関係だし、鹿鳴館は取り壊しは1940年だけども1890年に払い下げられたから、「現役」だった時期は東京駅(1914年竣工)と重なっていないとも言えるわけで。そもそも東京駅は100年経ってない。イメージ的には、よくわかるのだが。

白昼 朝宮運河
 亡くなった人を一々意識していたら、とても電車になんか乗っていられないけども、無感覚すぎるのもどうだろうと考えてしまった。
 誰かに自分の存在を知ってほしいと思うのは、こちらでもあちらでも一緒なのかなぁ。

新幹線 正本壽美
 これは実際体験したら、後味悪いだろうなぁ。見えなくても殺されたことを確信しちゃうような声。声だけだと余計想像力が……。嗚呼。

朧車 吉野あや
 付喪神的で色っぽくもアリ、胸キュンなお話でした。新幹線と主人公と「二人きり」。いやん。(?)
 妖怪の「朧車」はでっかくて図々しいイメージ(妖怪は詳しくない。勝手なイメージです。)なんだけども、新幹線は正反対だなあ。(笑)

見上げる二人 朝宮運河
 本当に見ているだけで、何もしていない二人。見届けることそのものが役割のモノが、いるんですな……。

何もできなくて、ごめんなさい。 守界
 前作は、「見届ける」のは、あやかしの存在だったけど、今作は違う。読者も自らが「見届ける」側に立つことを想像してしまう作品だ。
 主人公は気が付いて、涙を流した。それで役割はまっとうできているんじゃないか。

漆黒のトンネル 井上尚紀
 車で水汲みに行くという状況がちょっと理解できなくて、そのまま読み進めてしまった。たとえば名水で話題だからとか、そういうことが一言あれば、よかったのだけれど。
 一度出てきたのに、もう一度行って、最初の目的を果たさないまま返ってきてしまう、という二人の行動ばかりが気になって、犬に吠えられるとか音がするという現象に、意識が向かなかった。

乗り移るもの 秋芳雅人
 こうやって次々と乗り移っていく女は、一体どんな人だったんだろう。何か探しているんだろか。
 にしても、一度撒いたと思ったソレが乗り込んできたと知ったときの恐怖は、想像もしたくない。

生ゴムマニア クジラマク
 「済」。えええ~。(涙)
このゴム、タイヤの質感や匂いも連想させるので、事故の凄惨さやグロテスクさに拍車を掛けていると思う。
腕がないとか、顔に開口部がないとか、事故が起こる以前から既に普通に生きている状態と思えないこのライダーだけども、怖いのはライダーの存在の謎さでも、事故の様子でもなかった。主人公が「発見→驚愕→恐怖」を繰り返すことが、緊張感と恐怖をもたらしている。

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January 14, 2008

新刊のお知らせ「くりんくりんごーごー」

くりんくりんごーごー 佐々木マキ 1月18日発売 600円

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January 13, 2008

「てのひら怪談」が怪談

 今日は感想をおやすみして、頂いたコメントのお返事にかえて、余談を色々。

 考えてみるに、「怖い話」と「怪談」を、私は別物に捉えていたようだ。
 主な理由は二つ、一つ目は「作品であるかどうか」二つ目は「怪しい話と怖い話は違う」ということ。
 個人的見解、というより先入観に近いけども、頭を整理するためにもちょっと書いてみます。

 私がビーケーワン怪談大賞を知る前、つまり2007年の7月以前に「怪談」として認識していたのは、小泉八雲の怪談、牡丹灯籠、四谷怪談やら皿屋敷やら累ケ淵……のみだった。
 学生時代、日本文化、とくに近世の芸術や芸能を中心に広く浅く勉強していたので、これらは大学の幻想文学や演劇史などの授業中に、初めて内容を知ったのである。(詳しくはないよ)
 これらは八雲や南北や圓朝というクリエイターによって調えられ味つけられ、さらにそれを数々の演者や話者が舞台にあげてきた、文字どおり「文芸」作品だ。こーいう「作品」にまで昇華しているものが怪談と呼ばれるもんだと思っていた。漠然と、だけども。
 つまり「怖い話」は単に体験談で、人の創造や創作が加わららず、時の流れにも揉まれていないもの、と捉えていたわけです。これもなんとなく。

 二番目の理由「怪しいと怖い」について。たぶんこっちがメイン。
 怖い話は「怖い」というくらいだから、怖い体験であることや、読んだり聞いたりしたときに怖さを感じる、というのは重要だろう。そして心霊現象への興味・好奇心というのが、「怖い話」を支えているんだと思う。
 だけども「怪談」は「怪」。「怪しい」広がりも深みもあることばだ。色々な感情や感覚の中に内包する怖さに気付くことが、怪談の怪談らしさであり、愉しみなんじゃないか。

 牡丹灯籠やお岩さんも、恋があり哀しみがあり嫉妬があり、つまり人間同士のやりとりや営みから狂気が生まれたり死が訪れたりして、その延長に不思議な出来事や不気味な出来事が起きる。怪談において、幽霊や化け物のエピソードは、クライマックスやメインイベントではあるけども、テーマや核心ではない気がする。

 話の中にも外にも人の営みや縁があるかどうか。よい作品は人を繋いだり、別の作品を生むエネルギーを持っている。
 だから実話か創作かは、ミーハー的興味はあるけども、個々の怪談の良し悪しや存在意義にはあまり関係ないと思う。


さらに余談。
 私は、ビーケーワン怪談大賞を、松本楽志さんや添田健一さん経由で知り、〆切間際に一作だけ投稿しました。賞がつくとか本になるかもということは、全然わかってなくて、なんだか楽しそうだから仲間に入れてぇ〜と思って慌てて投稿したのです。
それ(「狐火を追うもの」)がてのひら怪談2に掲載された後、ここには詳しく書かないけども、冥土も巻き込んだ「縁」を感じる事実や出来事がいくつか起きました。
 私にとって「てのひら怪談」そのものが怪談(現在進行中)なのです。

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January 12, 2008

てのひら怪談 感想その6

 さてさて。相変わらずのぬるぬるな感想でございます。
ご覧のとおり、評論とか分析ではなく「ひょーたんはこんなとこが着目したよ、こんなふうに思ったよ」というだけの感想ですから、クチコミの一つ、というような気軽さで読んでいただければと思います。

 ・自分のメモ用に、お気に入りに★印をつけてます。「良い」ではなく「好き」であることをご承知置きください。


おーい グリーンドルフィン
 通り過ぎたものを見送った時の状況もちょっと見たかったな。これだけでは「身震いするようになった」というほどトラウマになったことに共感できなかった。

さんぽ 粟根のりこ
 おばさんに話しかけられたことで、疑問に思っていなかったものの存在に疑いが生まれ、それを怖いと感じる……という構図。
 だけども、やっぱり私はこの本に800字の怪異「小説」を求めているのだな。怖い話体験談としてではなく。このように淡々と起きたことを述べただけのカタチだと、物足りないと思ってしまう。

踊る婆さん 白ひびき
 晴れ着でも選ぶようなウキウキした感じなのがオカシイと思いつつ、それが踊る婆さんとマッチしていて、なんだか楽しい気分。
 こーいう人を食ったようなセンスはかなり好きだ。

真夜中の散歩 岩里藁人
 やっぱり真夜中の散歩はよろしくないですな。
 アチラの世界から野次馬が集まっていると読めるわけで、このアパートの一室に何があるのか想像したくなってしまう。もちろんいいことではないと思うのだけど。

キミは本物? 梅原公彦
 彼を置き去りにしたという状況が腑に落ちないな。「慌てて追いかけてきたのだと言う」ということは、それなりに落ちついて彼と話をしているわけで、壕が見えて駆け戻った時も彼が一緒に走っていてもおかしくないと思ったのだけど。
 そうなると、結末がなんだか取って付けたように思い、逆に結末を認めて読もうとすると一連のエピソードが帳尻合わせのように感じてしまって。

秘密基地 堀井紗由美
 うわ、そんなにはっきりとラッキーだなんて言っちゃっていいんですかね。と思いつつ、この主人公にとってどれだけ石を投げたことと青木の死がショッキングな出来事だったのか、というのが最後の一文でわかる。事故にあったのを「石を投げたせい」にしておかなければ、その罰が自分に向かなかったことを「ラッキー」と言わなければ、精神的にやっていけないんだろう。結局一生、二つの出来事から解放されないんじゃないか、この主人公は。

錬想 加楽幽明
 こういう狂気は怖すぎて降参、なのだけれども、じゃあ現実にあり得ないか、自分には起こりえないか、と言われると否定できないから尚怖い。

カミサマのいた公園 神森繁 ★
 肉団子!!犬を食らうのには抵抗を感じないが、肉団子限定に衝撃が。(笑)なんかやたらグロテスクな言葉に感じてしまった、肉団子。なぜ。
 子供のころはいろんなものに神々しさを感じていたな。蜘蛛の巣の美しさを論じながら友達と通学したことなどを思い出した。
 最後の言葉はかわいいなぁ。と思ってはいかんのか?あれ?

人を喰ったはなし クジラマク
 これも初めて読んだときに参ったなーと思った。アイドルを食べさせるとき、食べるとき、それぞれに生じているエロチックな虐げ感と、非常に悪い読後がたまりませんな。

んんーげっげ 有坂 十緒子
 これってTさんをどう捉えていいのか、よくわからなかった。Tさんが何らかのチカラで事故を引き起こしたのか、Tさんが飛び込んだのか、「んんーげっげ」という音だけでTさんではないのか。どっちでもいいように書いてあるのだと思うのだけど、そのぼやかしていることにあまり意義を感じなかったというか。
 そもそも事故の話より、「Tさんが辞めてしまった」ことに対して、イヤな印象を受けてしまった。確かにTさんの咳は耳障りだったのだろうけど、「フロア中に微妙な雰囲気」が不愉快で。なので、事故のエピソードは霞んでしまった感もあった。

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January 11, 2008

てのひら怪談 感想その5

 ・自分のメモ用に、お気に入りに★印をつけてます。「良い」ではなく「好き」であることをご承知置きください。

浄霊中 我妻 俊樹
 秦さんという名前がなんかいい味だしているなあ。ハタじゃなくシンなのが、なかなか。(説明になってない)
 なんだか几帳面な感じの浄霊師(?)ですな、汚い格好なのに。ちゃんと一軒一軒「終了」の札つけたりして。(笑)

換気扇 小林修
 うへえ。結局は換気扇を止めるだけなんだろうけど、この話はこの家族の中で幾度も語られることになるんだろうなあ。我が家の伝説はもっぱら「忘れ物」に関するものばかりですが。遺骨忘れたりとかね。

住んでいる家で昔起きたこと 佐々木隆
 うーむ。ポルターガイスト現象を羅列しただけ、というふうに読んでしまった。心霊現象に興味があれば、面白いのかもしれないけども。

落ちていく 平金魚
 なげやりな感じなのに段々言ってることがすごいことになっていって怖いっす。その加速度がすばらしい。
 ただ私としては「ネタ」を小手先で細工したようにしか見えないなあ。

怪段 猫屋四季
 上に同じく、ネタの域を出ていないかなぁ。雰囲気が何もないので、ただ字面をその通り読んで終わってしまった。読み手の想像力はもちろん創造力も刺激してくれるようなものが好きなのです。
 そういえば、終わらない階段の話は私も書いたことがあるような気がするんだけど……なかったけ?あぁ記憶が(涙)

白壁 岡部えつ
 「怖い話」として期待を裏切らない内容と結末。女の姿が明確で、I君の髪を伸ばさない理由として筋が通ってるので、素直に読めた。
 ゆうべ、というのがニクイですね。聞いたばかりの話を早速語っているという設定が。「新鮮さ」というのが、怪談フリークにとってどれほど重要なのかはわからないけども。

日々のつみかさね 平金魚
 あっはっは。これはなかなか呑気で楽しいなぁ。
 しかし、おたくの息子が突然行っても見えないと思う。そもそも親が自由研究を楽に済まさせようとするってどうなの。しかも友達のパクらせてさ。

デッドヒート ヒモロギヒロシ ★
 やられた。2に収録されている「死霊の盆踊り」より、個人的には好みです。一連の感想で何度か既に書いているけども、匂いとか触り心地とかが感じられる作品に惹かれる傾向があるので、白粉の匂いの洗濯物というのは、堪らないものが。(笑)このドタバタ劇の結末が「白粉」という艶かしい余韻なのも、また非常によいのです。

テスト 黒田広一郎
 ってことは、ここからまた「事件」や「事故」が起こりうる、そういうワケですね・・・。
 「彼女」は恋人だよね、たぶん。この後、二人の関係がどうなったのかも、ちょっと気になる。彼女はこの怪異現象のみをテストしたかったわけじゃないのかもしれない。と深読みしてみたり。

流れ 登木夏実
 これはどこにポイントを置けばいいのか、ちょっと困った。「流れ」ていること自体か「四十五年以上」に注目すべきか、はたまた飲み屋で「偶然」聞いたことか。
 最後になって初めて主人公のおおよその年齢が判明して、そこでもう一度この話の設定を頭の中で整理しなくちゃならないのが、面倒だった。「流れ」には興味をそそられたけども「四十五年以上」には驚きも何もなかったので、それが話の〆だったことに馴染めなかったのかも。

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January 10, 2008

てのひら怪談 感想その4

 ・自分のメモ用に、お気に入りに★印をつけてます。「良い」ではなく「好き」であることをご承知置きください。


指切り 不狼児
 とりあえず……痛そうだな。
 オトコノコのそいつに対する心持ちというのは、なかなか想像が及ばないのだけども、なんだかとてつもない興
味と執着があるらしいというのは、子供のころに起きたとある事件(笑)で思い知ったですよ。
 ティッシュに包んで、というのが、結構衝撃。
 そしてナイフの話だけに終わらないところ、どちらのエピソードもタイトルとちゃんと関わりがあるところが技アリ。

げんまん グリーンドルフィン
 うわ、何を約束させられたんだろう。
ポケットの中の手は自分から出たものではないのに、子供の声は己の肉体から発せられた、というのが怖い。「子供」が自分のウチのものかソトのものかわからんということが。

腕相撲 木村小鳥
 手の形をしていなかった、というのが気色悪いなぁ。群れていない子のほうが強い、というのがなんかいいですね。

ご時世 松音戸子
 あっはっは。本当にご時世だ。
 「第三者に提供致しません」のあと、皆が恐がらなかったのもまたご時世。この台詞、決まり文句になり過ぎて、重みとか信用とかがなくなってるもの。

時計 米川京
 あ、これはイヤだ。個人的にはかなり怖さのツボつかれたかも。時間に追われるのが、非常に苦手なんですね。そこへ、時計の表示。もうパニック必至だよ、これ。

「怖い話」のメール 中島鉄也
 あぁ……。やっちゃった。
 なんというか、私の中にあった「怖い話」のイメージに近い読後感だった。小学生のころ、同級生と車座になって怖い話を聞いた時の気分を思い出す。

怪談サイトの怪 矢内りんご 
 いやー怪談サイトの怪談がみんな「本当の怪談」だったらたまりませんな。でも、もしかしたら、気が付かないだけで…なんちゃって。

よくある話 伊予 葉山
 パソコンのご機嫌(機械に機嫌というのはオカシイのだが)って確かに怪異現象じみているところがある。
 ビーケーワン怪談大賞に投稿した人はほとんどパソコンで怪談を入力してメールで送信したわけだから、ネット
発表時にはある種の臨場感もあっただろうな。

足切り女 綾倉 エリ
 これはショートショートの読み心地。でも、そこに怖い話特有の読後感がある。よくもわるくもお手本的な感じかな。
 それにしても1にはこれだけあった「怪談サイトもの」が2には見当たりませんね。私自身、怪談自体に興味があるわけではないので、「怪談サイト」は見たことがありません。というか、怪談サイトってものがあることを本書で気が付いたわけです。体験がないので「ふーん」という感じでしか読めないのがアレですが。

マユミ 梅原公彦
 「マユミ」も電話の主が見えてたり、声が聞こえてたりするんじゃないか?当人同士でやってくれよ、まったく。(笑)なぜ、電話を介さなくちゃいかんのだろう、電話なんか使わなくても、フツーの人間を通さなくてもよさそうなのに。この主人公に恨みがあるなら、また別だけども。

電話 杜地都
 これも「参ったなあ」と思った作品。これは現実に同じ性質の怖さを味わう可能性があるし、味わったことがある人もいるだろう。現実感と怪異の雰囲気が絶妙に混ざり合っていて、ほんとイヤ。(褒めてます)

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January 09, 2008

てのひら怪談 感想その3

 ・自分のメモ用に、お気に入りに★印をつけてます。「良い」ではなく「好き」であることをご承知置きください。

恩人 酒月茗
 「物事の順序を破ることにより起こる怪異」というのは、古臭かったり土着的なイメージが強いけれども、しっかりと現代の物語になっている。日本刀を譲り受ける人はほとんどいないだろうけども、小難しく面倒な手順を省いてしまった気分はわかりすぎるくらいによくわかる。
 大沢のキャラクターや私とのやりとりも、ほどほどに自然で面白く読んだ。

祖父のカセットテープ 黒史郎
 おっかねえのかわからない、と語り手は言っていますが、おっかねえでしょう、これは。(笑)
にしても、ずいぶんアクティブなババアだこと。

火傷 グリフィンドール
 う・・・。痛い・・・。過去に自分に起きた出来事を聞いてしまうわけですが、これは録音されていたというより(CDだし)、SFっぽく、ヘッドフォンを通じて過去と繋がっていると読みたい。

火傷と根付 矢内りんご
 おもしろがってるよ、この人…。作者さんのお望みどおり(?)怪談なんか書くもんじゃないな、と思ってしまった。

半券 痛田三
 松本清張の「砂の器」も映画も未見なのですが、それは関係なく面白く読めました。古本に、前の持ち主の気配が残っていることは確かにあることで、そーいう体験がある人は、グッとこの物語を身近に感じられるだろう。
 なぜ「砂の器」なんだろう、と思っていたら最後の詩。なるほど。

傘を拾った話 佐々木土下座衛門
 深読みしすぎだろうけども、次に事故に遭うのはこの語り手なんじゃないか、と思った。「面識のない人」とわざわざ言うところにひっかっかったわけだけど。

泣き石 六條靖子 ★
 抽出の中の箱庭空間にそそられます。息子はいくつなのかしらん。小学校3年生くらいだといいな。(何故)
 水音が咆哮になり、落として沈黙して。石の中では一体何が起きたんだろう。石の中の「何か」が死んでしまったように感じたのは、私だけだろうか。

淳くんの匣 君島慧是 ★
 君島さんはアート関係にお詳しいのだなあ。いいなあ。桑原弘明さんのスコープとかもお好きかしらん。
 匣の中の怪異と葬式はきっと直接のつながりはないのだよね。だけど、「つながりがあるように思わずにはいられない」人情、みたいのが感じられて面白い。
 そして、最後の冷蔵庫、これ「匣の中の冷蔵庫」と「現物の冷蔵庫」とをわざとごっちゃに書いてあるように思うんだけど(「ボールペンで……閉め」るのに「中のものが腐る」)そーいう異界との境界があやふやになるような感じがすごく好き。

木乃伊 暮木椎哉
 かくれんぼで、一人隠れているときの孤独が私は苦手だった。自分だけ忘れられて、ほかの子たちはもう別の遊びを始めているのではないか、とよく思ったものだ。隠れているときは、普段と違う時間の流れと心持になる。
しかも蔵の中。そして木乃伊。これは別に怪異現象が起きているわけじゃない。木乃伊だって睨まれたように感じただけ、だろうし。なのに、ちゃんと怖い。
 という感じで満足してしまったので、最後の一文はなくてもよかったかなあ。

出目金 興田募
 赤から黒になったことが一番ギョッとした。血の色、めでたい色の赤。悼む色、恐怖の色の黒。
拷問を受ける出目金を見る弟も、Nと同じく何がしかの快楽を感じていたのではないだろうか。黒い出目金も再び殺されることを望んだわけではないだろうけども。

煙猫 新熊昇
 新熊昇さんは、2でも猫のお話を書いておられますね。
 猫がなぜ幻想小説と相性がいいか。シルエットが絵になる、独りで行動する(その間の様子が人に見えない)、身体の柔らかさ、しなやかに色気を見出せる、等々の要素があると思うのだけど、今作は猫の姿形と煙をうまくからめてある。
 今は葬儀社に、という結末だけども、はてさてどちらが猫にはうれしいだろうか。煙猫が喜んでお気に入りの場所に走っていったとなると……。皮肉のある結末だ。

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January 08, 2008

てのひら怪談 感想その2

 ・自分のメモ用に、お気に入りに★印をつけてます。「良い」ではなく「好き」であることをご承知置きください。

ひどいところ 平金魚
 幸い、私は身内の死はまだ老人でしかしらないけれども、祖父や祖母が夢に出て来た日は、一日切ないような嬉しいような気分になる。
 この兄さんは、本当に優しすぎる。この主人公も優しすぎる。
 頭が良すぎるひとと優しすぎるひとは、どうも生き急いで見えるような気がするのは、私だけだろうか。

明け方に見た夢 樋口摩琴
 虫の知らせの明確バージョンと言った感じ。昨夏、祖母を亡くした時、私はその時刻ごろ腹痛を起こした。(笑)
 だから、あり得ないとは思わない。
 しかし、このような内容は、今まさに家族の死を迎えそうな人や迎えたばかりの人が読むと、つらいのではないだろうか。だから悪いというわけではないけども。

 雨川アメ ★
 これも初めて読んだ時に印象残った作品。
 兄とS子ちゃん、それぞれが自分の名前しか聞こえないというのもうまいけれど甘い匂いとベタベタした桃の汁が、お盆の季節やこの世を見ることなく逝った子供のイメージと結びつき、余韻が残った。

水遊び グリーンドルフィン
 どこで気付いてしまったのかが、もう少し明確であればよかったのだけども、湯灌を死人の立場で体験するとこんな感じ?というと乱暴か。

連れて行くわ 雨川 アメ
 これは早々に結末がわかってしまった。
 しかし、継母を先に殺さなかった母親の心情が今一つわからない。冥土でも娘を手元に置くほうが安心、ということか。ああ、継母と同じ世界に暮らすのが嫌だったんだな。

墓参り 高橋史絵
 迷宮入り……。死んだ者に尋ねることはできない。
 といいつつ。なぜ勘当したのが女親なんだろう、と若干ひっかかりを覚えながら読みすすめたのだが、結末から「ひそかに連絡を取り合っていた母と息子」と読むこともできる。
 でも、そう考えてみてもなんとなくザラザラした読後だ。

おかえり 峯野嵐
 年寄りと音、というのは確かに強い結びつきがあるかもしれない。咳払いだったり足音だったり。
 そんなところに上手く着目、というかどの程度実話なのかわからないけども、作者さん自身の経験が含まれているのだろうと思わせる、鮮やかで確信のあるおばあちゃまの描写でした。

世話 杜地都
 冒頭の「蛙の声」のおかげで「それ、」を蛙的ビジュアルで想像してしまったのだけど、これは作者の仕掛けだろうか。(笑)
 こういう引き継ぐ系のモノは、なぜだか女のほうが濃い気がする。糠床とか(?)。この国で男子を後継と見なすのは、女は放っておいても色々引き継ぐからかもしれんな。なんて思ってみたり。

のほうさん 朱雀門出
 これも印象が強かった作品。
 またまた個人的な話だが、父の実家には私が子供のころまでお手伝いさんがいて「なんぜさん」と呼んでいた。写真で見たことないことや今一つ素性がわからない感じを思い出して、すごくシンパシーを抱いてしまったんである。
 ちなみに、ちゃんと家族の話題にはのぼりますが、亡くなったのかどうか、はっきり知らないんだ、実は。

生き血 田辺青蛙
 内容的には、オーソドックス。末代まで祟られちゃってますな。
 田辺さんの作品は、描写が明確というかシャープな感じがして、そこに個性が現れていると思う。文体とか出てくるモチーフとかに個性が出ていると感じることが多いのだけど、田辺青蛙のはちょっと違うように思う。

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January 07, 2008

てのひら怪談 感想その1

 というわけで、週刊てのひら怪談の感想は秋山くんにされてしまったので(?)、「てのひら怪談」の感想を書いてみようと思い立ってしまった。しまった。「webベースでの地道な宣伝活動のつもり」と自分を励まします。はい。
 「てのひら怪談2」と同じく、ぬるめでいきますが、2の時と違い「どう怖かったか」という観点はほとんど意識せずに読んでいるので、ちょっと雰囲気変わっているかもしれません。


歌舞伎 我妻 俊樹
 二度三度と展開があって、引き込まれた。錆びた電池でしか鳴らないラジオ、というのは非常にコドモ心をくすぐるなあ。わくわく。
 ロシア語の放送が歌舞伎の台詞のよう、というのが結びつかなくて苛苛としたら、それ自体が結末なので読後感が非常に強く残った。

 夢乃 鳥子
 若干、文体が作り込みすぎのきらいがあるけども、この辺は好みですね。
 女の微笑みはモナ・リザを思わせて巧い。最後の一文が、この怪異が終わらないことの暗示にも読めるし、長い影が視覚的に妖しくて素敵。

軍馬の帰還 勝山 海百合
 なぜだかちょっと読みにくくて、二度三度読み返した。内容がわからなかったのではなく、状況がわからなかったわけでもなく、一人称として読んでいなかったようだ。なんでだろ。
 それはさておき、グッとくる話だ。戦に出るものへの想いは人へも馬へも関係ない。それにしても馬は人間と関わりが深い動物ではあるが、戦との関わりがもっとも強い動物であることよ。なんだか人間のエゴを感じます。サラブレッドの人工的な美しさもまた。

夏の夜 田辺 青蛙
 そういう祖母自身ももはや「昔の女」だなあ。(笑)
 鯉と少女のビジュアルが非常にカラフルで耽美で素敵なのだけども、ストーリーとの必然性はあんまり見出せなかった。若かった祖父と生前の少女(と鯉)に起きた物語を想像させるには、ちと描写が足りないように思う。

ムグッチョの唄 江崎 来人
 無駄な描写がなく、きっちりと展開していて巧いなあ。「ムグッチョ」という音と、身体中に水草が捲きついた男の姿が実にピッタリ。

吉田爺 立花腑楽
 1を読んだのは、拙作が2に載ると決まってからだったのだけど、これを読んだときには参ったなあ、と思った。(笑)こーいう実話にも創作にも読める筆力と怖さを求められていたのか?!と。どう考えても敵いません。
 立花腑楽の作品としては、2の「夏の終わりに」のより幻想的な話のほうが好みなんだけれども。

光の穴 野々宮 夜猿
 これはさらに実話っぽさが強い作品。一人で出て行ったことは、仲間も覚えていることだから事実だろうけども、その間の出来事はすべてあやふや。最後の一文は実話ならアリだけど創作なら蛇足かも。

階段 白 ひびき
 あはは。「地に足がついてない」お父さんは正しかったわけですな。(笑)
 「ニュルンという感触」が味わいたい~。ちょっと空気の階段を探してみようかしらん。

猫である 不狼児
 うーん。不狼児め。と初読で思いました。(笑)最後の段落だけでも超短編的には成立しそうだな、てことも思いました。
 漱石を思わせる旧かな遣いが映えている。「月の光」「蛭」「鏡」「竹藪」と、濃い目のガジェットが連続するけども、胸焼けせずに読めたのは、一連の流れに無理がないからだろう。ごちそうさまでした。

薫糖 田辺 青蛙
 くんとう、と読むのだろうか、話を読み終えてこのタイトルを見たとき、嗚呼と思った。「薫陶」という言葉はもちろん、源氏物語の薫もちゃんと掛かっているんですね。あっぱれ。
 この終りの見えない復習の儀式は、いづれ祭事の類に習慣化しそうな予感。恨みもさることながら、人の営みにも思いを馳せることとなった。

ガス室 クジラマク
 クジラマクさんは2に収録の「赤き丸」でもモニターに写る映像を使っているけども、今作は「赤き丸」よりももっと凄惨でリアル。けれどもどこかユーモラスな味わいがあるのは、この人ならではだな。
 しかし、笑ってばかりはいられない。Sさんの冷静さというか、慣れてしまった感を思うとどうだろう。


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