March 02, 2009

週刊てのひら怪談感想25狐狸夢中/霊廟に赤い雫を

webマガジンポプラビーチ「週刊てのひら怪談」の感想をひっそりと。
ちなみに不定期更新です。

作品を読む→「狐狸夢中」ヒモロギヒロシ&「霊廟に赤い雫を」君島慧是

狐狸夢中 ヒモロギヒロシ
 ちゃんとヒモロギさんの仕掛けた罠(罠?)を読めた気がしない。たとえば狸や狐の名前などにも意図があると思うのだけど。しかし、とても面白かった。文中にもあるように「狸は愛嬌」。狸への愛が溢れています。
 狸と狐、どちらが科学技術が似合いそうかと云われれば、私は狐と答えます。現代の童話ではキツネの博士って時々登場するんですね。(例:小沢正 『キツネはかせ』シリーズ等)そんな私の先入感を狸が愛嬌たっぷりにひっくり返してくれたところも、愉しみました。

霊廟に赤い雫を 君島慧是
 うーん、なんと壮大で妖艶な。800字ってここまで描けるのだな。溜息。 痛みとの引換えに何かを得ようとする姿は、なぜこんなにも甘美なのか。「何か」が物体ではないからかもしれない。
 巫女の焼失や、血を垂らすようになった由来が語られるようになると思いきや、逆でした。じゃあ、その由来が読んでいて気になったかというとそんなことはなく、こちらも焔の鳥に魅了されていった。
 「柿が実る頃にその人数は三倍に膨らみ、雪がちらつきはじめると」とあるので、古代の中国かヤマトの匂いもする。(柿は東アジアの原産ですよね、確か)一方で、いずこともなく異国の香りもする、不思議なエキゾチックさを感じました。
 15歳の頃一度読んだきりの手塚治虫『火の鳥』も読み返したいなあ、なんてことも思ってしまいました。



「天空へ」つながり

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てのひら怪談百怪繚乱

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December 31, 2008

てのひら怪談 ラインナップ

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November 08, 2008

生き屏風 田辺青蛙 角川ホラー文庫



 てのひら怪談から飛び出した田辺青蛙さんの初の単著。改めて、おめでとうございます。

 第15回日本ホラー小説大賞短編賞受賞作である表題作「生き屏風」と書き下ろしの「猫雪」と「狐妖の宴」 の三作を収録しているが、いずれも「県境の妖 皐月」とその周辺を描いた作品である。

 いちいち美味そうな食べ物、「猫雪」での官能的で儚い雪、生臭いはずの布団の心地よさ、など細かい描写が非常に丁寧で、映像的なだけでなく、味や香りや感触までも伝わってくるのはさすが。
 また登場人(妖)物が生き生きと描かれているところに、「てのひら」以降の成長を特に感じた。(偉そうでごめんなさい)
 個人的に気になったのは、改行(段落)が多く思えたこと。これは話の流れに乗るにつれ、気にならなくなったけれど。

 今作の大きな特徴は「登場人物が自身を語る」ことにあるのではないだろうか。三作とも、あらゆる登場人物が、己の半生や思い出、事情や想いを饒舌に語り合っている。ほとんどそれだけで成り立っているような気すらした。
 そこで語られた逸話の内容ももちろん興味をそそられるのだけれども、「語り合っている」ことが何より大事なところだと私は感じた。一方的に想いを吐いているわけではなく、互いが互いの話をよく聞いているのである。唯一独白に近いのは「猫雪」の主人公次郎だが、彼も身を売る女の事情に遭遇したり(もっとも次郎はその真相を疑っているが)、「猫先生」に語りかけたりと、必ずしも「言いっぱなし」ではない。
 我々の日常ではここに出てくる登場人物のように訥々と自分の人生や苦しみを語る機会はそんなに多くはないけれど、友人たちはもちろん、町ですれ違うだけの見知らぬ人もそれぞれ色々な事情や想いを抱えながら生活しているのだよなあ、大なり小なり「生きづらさ」を皆持っているのだ、という感慨を新たにした。

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June 18, 2008

週刊てのひら怪談感想31 登山競争/夜の女

webマガジンポプラビーチ「週刊てのひら怪談」の感想をひっそりと。
ちなみに不定期更新です。

作品を読む→「登山競争」峯野嵐&「夜の女」平金魚

登山競争 峯野嵐
 「足を止めると動けなくなるので、」のくだり、体力のない私は頷きながら読んでしまった。(笑)
 落ち葉や岩だらけのところに現れた赤い花のスカートの女の印象はさぞ強烈だったことだろう。「ものすごい速さ」というのはどんなに速かったのか。長いスカートで山道を下りることは、普通なら無理なのに「ものすごい速さ」。何をそんなに急いでいるんだか知らないが、あまりにも不似合いで滑稽でさえある。
 最後の一文に、主人公の複雑な気持ちが全部込められていて、余韻が残った。
 峯野さんは、てのひら怪談の「おかえり」やてのひら怪談2の「ハンター」でも、登場人物への眼差しが温かい。見習いたいです。

夜の女 平金魚
 はしたない女にははしたない女ならではの色気(そんななまっちょろいもんじゃないけど)があって、それが巧く描かれていると思う。たとえば「よその家の塀に寄り掛かり」。これがあるのとないのでは、女の印象が全く違ったと思うのだ。
 螢を飲み込んで光る喉は、はなはだ眉唾ものだけれども、喉は急所だ。命に関わる。その喉が白く光る、それを触ってみたいという衝動は、猟奇的でもありゾクゾクする。
  

「訳ありげな女」繋がり


 「登山競争」の作者、峯野嵐さんが4月に亡くなられていたことを東雅夫さんのブログで知り、このような形で哀悼の意を表明することにいたしました。心よりご冥福をお祈りします。(6月18日記す)

 急遽順序を飛ばしての感想になりました。ご容赦くださいませ。飛ばした分の感想が書きあがったら、ブログ上では順番どおりになるように投稿日などを調整します。


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June 08, 2008

週刊てのひら怪談感想24 塩の小箱/宮本武蔵

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ちなみに不定期更新です。

作品を読む→「塩の小箱」田辺青蛙&「宮本武蔵」不狼児

塩の小箱 田辺青蛙
 いい具合に気色が悪い。塩で溶けると聞くともちろんアレを連想するけれども、いやはや、もっとタチが悪い。(笑)
 「できるかな」の感想にも書いたけれど、因果応報の要素がこの作品でも見られる。また、日常生活の描写にするりと怪異を滑り込ませるのが、とてもお上手だと思う。しかもそこに描かれる日常は、ちょっとノスタルジックな雰囲気も感じられる。現代の機械や時間に追われる生活ではなくて、もっと臭いのある日々の営みとしての生活。それにしても、お茶、なんだかしょっぱそう。(笑)
 なりそこないの鬼は、本当の鬼となったのだから、塩に溶けたことを喜んでいるのではないか?となんとなく思ってしまった。

宮本武蔵 不狼児
 「好敵手」というのは、きっと当人同士にしかわからない、ある種の情とか繋がりがあるのだろう。それをなんとも不気味に、読みようによってはロマンチックに描いているなあ、と感嘆した。
 武蔵の絵画というと、達磨や布袋を描いたものがイメージされるのだが、作中登場するのは「竹雀柳燕図」(岡山県立美術館蔵)の右幅だろうか、こーいうのも描いていたのだねえ。勉強になった。ありがとう、不狼児さん。
 しかし、この絵をチョイスしてくるあたりがまた心憎い。細い竹と、そこに留まる雀は、そのまま剣の緊迫感に通ずるし、「怨念に臆して、顫えながらあたりを窺う雀こそ自らの姿。」を踏まえて絵を見れば、まったくそのように見えるではないか。


「まとわりつく者」つながり

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June 07, 2008

週刊てのひら怪談感想23 涙の初恋/斜視

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作品を読む→「涙の初恋」不狼児&「斜視」立花腑楽

涙の初恋 不狼児
 不狼児さんの作品は、ユーモラスな作品でも、どこか後ろ暗いというか陰湿な(褒めています)感じが漂っていると感じることも多い。この作品も「パチン」から続く「涙の量はちょうどつぶれた少女一人分。」など、なかなかショッキングなイメージが使われている。
 けれども、なんだか少年の恋のときめきや切なさのほうを私は強く感じてしまって、思いのほかドキドキしてしまいました。あらまあ。
 最後の一文は秀逸、ビジュアル的に不気味さもありつつ失恋の喪失感も旨く出ている。

斜視 立花腑楽
 うーん、これも切ないですな。もちろん不狼児作とは別の意味で。
 これもまた、少年の気持ちが巧く出ていると思う。母の死を、右目の現象を、どうにか頭で理解しようと分析を試みているあたり、とてもリアルだと思う。
 ものすごく勝手な解釈だけれど、「諦念の痛み」という言葉からお母さんもまた諦め成仏を決めたんじゃないか、みたいなことまで連想した。夫と息子が自分のテリトリーから去っていくのを目の当たりにして、お母さんもまた諦念の痛みを感じていたんじゃないかなあ、と。もちろん、お母さんの幽霊は何も出てこないので、勝手に感情移入した結果ですけれど。
 

「片目で泣く」「パチン」つながり

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June 06, 2008

週刊てのひら怪談感想22 閉じ込められて/夢に見るは美しき君の屍

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作品を読む→「閉じ込められて」痛田三&「夢に見るは美しき君の屍」高橋史絵

閉じ込められて 痛田三
 読めば読むほど、状況がわからなくなってしまった。(涙)
 「ガンッ。」や 「ドンッ、ガン、ガン。」がトイレの内側、外側、どちらで起きた音なのか、わからなかった。宮辻さんが中から「ドアを叩きまくった」音なのか、 「ちょっと、やめなさいよ!」だから、外にいた誰かが何かした音なのか。
 「だからたちの悪い夢でも見てたのよ。」も宮辻さん自身に向けた言葉か、外の友人たちに対して言ったのか。でも警備員に助けられたってことは閉じ込められたのは事実なんだろうし。
 「またか」という警備員の言葉も、閉じ込められたことに対する「またか」なのか、外にいる友人たちに起きたことや友人たちが宮辻さんが閉じ込められたことを「知らなかった」に対する「またか」なのか。
 キーセンテンスが悉くどこに掛かるのか、どこに対して発せられたのか曖昧だったので、怪異のメインイベント(?)がどれだかよくわかんなくなってしまった。閉じ込められたこと?外の友人たちに起きたこと?友人たちが知らなかったこと?「またか」なこと?それとも全部、宮辻さんの妄言?
うーん。あちこちで消化不良です。読みが下手で申し訳ない。
 
夢に見るは美しき君の屍 高橋史絵
 タイトル通り、美しい。散文のような独白のような形ではあるけれど、背後に物語の気配があって素敵。ほどよく狂気もあり、その狂気を現すのに相応しい形がこの形式だったのだろう。
 白と黒が交互に現れる。白は吉凶ともに用いられる色だけれども、ここに出てくる白その両方を含んでいる。なにより「果かなさ」を見事に現していて、堪りません。ごちそーさまでした。


「閉じ込められ」つながり

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June 05, 2008

週刊てのひら怪談感想21 蓋/冬の足音

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作品を読む→「蓋」伊予葉山&「冬の足音」暮木椎哉
 伊予葉山
 人助け(?)する怪談ってのも、珍しい。なんだかとても好きな話です。
 死を望む者と、生にすがる者の対比が非常に興味深かった。血みどろの女は大怪我でもしていたのだろうか、ともかく主人公の自殺を止めることで己と主人公を助ける。一方、主人公は自殺を思いとどまることで、女を助けた。
 開きかけの蓋はどこにでもあり、まさに蓋が姿を現したところで話が終わる。この主人公と女のように「うまくいった」のは、稀なんだろうな、と思う。これもまた「縁」。

冬の足音 暮木椎哉
 静かな雪の晩に「どすん」という音、そりゃあ飛び上がるほどびっくりするでしょうな。そして足型に見える痕跡。痕跡というのは、つまり痕跡を残したものはもうそこにない、ということで。しかも通常の足跡とは言い難いあらゆる点で不自然な痕跡。
これはもう、ただ雪が解けるのを待つしかない。逆に言えば、雪が解けるまでその不気味さが持続する。


「落ちる」つながり

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June 03, 2008

週刊てのひら怪談感想20 シミュラクラ/女神の順番

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作品を読む→「シミュラクラ」貫井輝&「女神の順番」我妻俊樹

シミュラクラ 貫井輝
 ハンカチが、老婆を「呼び出して」しまったのだろう、というのはよくわかるし、(野次馬的ではあるが)興味を持ったのだけども、出窓に出来た老婆の顔を具体的に想像するのにやたら時間がかかってしまい、いまひとつ楽しめなかった。や、これは私の想像が下手だっただけなのです。うう。
 佐々木マキさんの、唯一の写真絵本に「まちにはいろんなかおがいて」という、まさにシミュラクラな作品があるのですが、残念ながら現在通常には入手できません。と、たまにはマキさんの話をしないと。(笑)

女神の順番 我妻俊樹
 ミチが不気味で、けども何かやはりチャーミングに思えてしまう。ヒサシが死んだのも、「近頃急病だ事故だと歯抜けの目立つ兄弟たち」もミチと無関係とは思えないし、語り手がもらう「ご褒美」はもちろん美しくない。けれど「足りない子」の持つ魅力とそれを愛で辱める者の心情がどんぴしゃりな言葉で重ねられていく。これは我妻さんの筆力にほかならないだろう。特に「優しくてちょっと足りなくて」や「石鹸の泡のはじけたような声」の件は、見事だ。
 語り手の言う通り、大丈夫じゃない気がする。色々と。関わらないほうがよさそうだ。


「心霊トーク」つながり

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May 31, 2008

週刊てのひら怪談感想19 夢で会いましょう/イヤァな夢

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作品を読む→「夢で会いましょう」黒田広一郎&「イヤァな夢」粟根のりこ

夢で会いましょう 黒田広一郎
 そんなに簡単に、そしてすぐに人と同じ夢を見られるかー、と思ったりもしたのだけど、それは野暮な突っ込みだろうから置いておいて。
 夢の中のイメージがかなり具体的なのが面白い。洋館と刀男。「でも目ぇ腐って、脳みそ溶けてしもてからは」の文から、持田さんが刀男が段々と腐っていく様を見ていたことが窺える。
 作者さんの脳内で、きちっと出来あがったイメージがあったのだろうなあ。それがちゃんと読み手にも伝わり、且つ口説くなく描かれているのが好もしいと思った。
 
イヤァな夢 粟根のりこ
 十分怖いでしょ!と、少々呑気な小木さんにコケる。(笑)
 というか、ここが結構、この作品のツボなんじゃないかと思うのだけど、小木さんはあくまで「イヤァな夢」とおっしゃる。ほかの形容もありそうなのに。
 相手の身体が一部しか見えない・全体を見たくとも見えない、というのも、よい気分ではないな。謝っているという状況と相まって、なにかに心身ともに拘束されているような印象を受ける。屈服。
 同じような夢を見たら、相手を恐ろしく感じたり、もしかしたら苛苛すると思うのだけど。
 のに、やっぱり小木さんは「イヤァな夢」で済ませちゃうのか。そうなのか。大物だなあ、小木さん。

 ところで、バックナンバー(プルダウンメニュー)のとこのタイトルが「ヤァな夢」となっている。「イ」がないのです。だれかー(?)


「夢」繋がり

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May 29, 2008

週刊てのひら怪談感想18 雨の日の帰宅/文鳥

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作品を読む→「雨の日の帰宅」田辺青蛙&「文鳥」朱雀門出

雨の日の帰宅 田辺青蛙
 わー、雨の日に読んでしまった。こないだから(不狼児さんの「うぐいす餡パン」)、妙にどんぴしゃなタイミングで読んでいるようで、不思議な心持ちになる。こーいうのも一種の縁だと思う。読むべくして読んだ、と感じてしまう。
 腐りかけているとはいえ、触れる身体で帰ってくる、というが主人公の切なさをより大きくしているのだろうな。これが霊の状態であれば、抱きついて出迎えることも、指に香りが残ることもない。
 形あるもの、触れるもの。存在の確かさを肌で感じると、その余韻は目で見ただけより長いのだね。そこに愛情があるなら、なおさら。
 
文鳥 朱雀門出
 母に裏切られた庄吉のその後を思うと、不憫というか、恐ろしくて想像したくない。
 それにしても、母の幽霊はなぜ、そんなことをしたのだろう。もしかしたら、本当は母の亡霊ではなかったのかもしれない、とか色々考えてしまった。理由がわかるほうがいい、とはいえないけれど、読者を驚かすためだけの結末だったらナンだなあ、と思ってしまった。
 蛇足。『てのひら怪談2』の拙作の終わり方も同じような系統の結びなので、人のことはいえないのはよくわかっています。あれは「狐火の行列に混じる人形」というイメージが湧いたのをきっかけに書いた話なので、作者としては「必然の結末」でした。では、この作品は作者さんの脳内でどういう発想と展開が為されて書かれたのだろう、というモノカキ側から興味を持ったのであります。色々自戒をこめつつ。
 

「家族の死人」繋がり

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週刊てのひら怪談感想17 鎖の家/先輩の死

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作品を読む→「鎖の家」クジラマク&「先輩の死」林不木

鎖の家 クジラマク
 なんかもう、色々ありえないのに、ぞっとするというか。なんといったら。(褒めてます)
 鎖とか火事とか自慰とか自分に似た人とか、ユングやフロイト的に分析をしたらどうなるんだろう、というような興味を覚えた。そちらの知識は皆無なので、なんともいえないけども。
 鎖が落ちる場面、悪い暗示のようで気分が悪い。抑圧されていたものが噴出す前触れのようにも見えるし、拘束されていたドッペルゲンガー(死の予兆?!)が動き出したようにも見える。
 普通じゃない性的嗜好を持つと大変ですね。(そこかい)

先輩の死 林不木
 耳からの怖さを、文字で上手く表している。それも、黒という色とうまく絡めてある。虫、夜、烏、テープ。極めつけに『先輩の家の窓に、黒いのがいたんだ。』とくる。一箇所だけ現れる「ビルの赤い点滅」の赤も鮮烈で効果的だと思う。
 映像で見ているような気分、見てみたい気分になるけれど、文章で、800字で、この体感ができるという事実が私は嬉しい。


「家」繋がり

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May 24, 2008

週刊てのひら怪談感想16 姉や/朋有り、遠方より来たる。

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作品を読む→「姉や」沢井良太&「朋有り、遠方より来たる。」平金魚

姉や 沢井良太
 結末は途中から読めてしまっているのに、主人公の少年らしい気持ちがひしひしと伝わってきて、迂闊にもちょっとグッときた。すみません、子どもモノに弱いです。(笑)
 山や田の緑、姉やの白い肌、藍色の着物、月の黄色、と色彩が幻想的で美しかったことも、非常にツボだった。色にひどく執着する性質なのです。

朋有り、遠方より来たる。 平金魚
 この連体止めは、ちょっとわざとらしいなあ、と思いつつ。
 死んだ者と気づきながら、話に付き合っている主人公の気がしれないような、わかるような。(笑)
 最後の一文には、ドキリとさせられた。乾燥しているという感触から、幽霊というより死体そのものを連想したからだ。なんとなく、ふつうの幽霊(?)は湿っぽそうなイメージがあるのだ、私は。


「死者と出合う」つながり
 
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週刊てのひら怪談感想15 弁天池にて/あひるの夜

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作品を読む→「弁天池にて」矢内りんご&「あひるの夜」黒史郎

弁天池にて 矢内りんご
 話の中心がどこにあるのか、ちょっと迷った。ホームレスのおじさんの様子か、社長についての話か、「ないね」と言いつつ最後に観音像の話を聞かせてくれたことか。観音像のエピソードの内容か。
 もちろん最後なのだろうけど、個人的には社長のことが一番印象に残ってしまった。おじさんに話を聞いたときの情景を描くことで、そのときの雰囲気をもパッケージする意図があるのだと思うが、私には逆効果だったみたいだ。
 そして、浅草の弁天池についての予備知識がないと、ちと辛い。
 
あひるの夜 黒史郎
 若干、作り込みすぎの印象があったのだけれど、これは好みだろうなあ。「地蔵に似た形の小さな像」あたりから、これは何か意味を含ませているに違いないと探るように読みはじめ、「――素直な子だったんだ。」ここは感傷を誘う狙いがあるぞと疑い。(笑)
 結果、「ああ、やっぱりね」という読後になってしまった。
 蛇足だが、中学生の頃「ショートショートの広場」を夢中で読んでいたのに、いわゆる「オチのはっきりしたショートショート」から距離をおくようになったのは、こうして疑り深く読んでしまう自分がイヤになったからである。たとえ、伏線や仕掛けに気づかず結末に膝を打っても「ワケが分かってすっきり!ハイ、終了」とクイズの回答を聞いたかのごとく、余韻も何もなく次から次へと読み捨てていく読み方しかできない。私はあまりよい読者ではないのだと思う。
 

「池と女の悲しみ」繋がり

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May 22, 2008

週刊てのひら怪談感想14 同調/闇喰む女

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作品を読む→「同調」斜斤&「闇喰む女」立花腑楽

同調 斜斤
 汚れたものに強く惹かれるというのは、きっと誰しもにあるのだろう。臭いのに嗅いでしまうのもそうだ。(笑)汚いものを嫌悪するのもまた惹かれるのの一面であるのではないかと思う。主人公が彼女の汚い口腔から目が離せない気分がきちんと描写されていてよかった。
 都会の様子から、自分たちの疲れを連想するのは、なんだか色々皮肉も込められていて、なかなか辛辣だ。
そしてこのタイトル。「彼女の口腔と西新宿の同調」はもちろん、「僕か、彼女か、それとも二人とも?」の一文から「主人公と彼女の同調」ともとれる。なんだよ、そのラヴラヴアピールは!(違?)

闇喰む女 立花腑楽 
 闇を描くのって、難しいといつも思っているのだけれど、これは巧い。「空洞めいたその口腔から覗くのは、」の件あたりが特に。
 エロいんだけど、女に対する嫌悪感のほうが強くて「うわ~、いらんもん見た」と思ってしまった。(笑)まさしく上にも書いた「嫌悪もまた惹かれている証」状態だ。
 そういえば、腑楽さんと初めてお会いした吸血鬼のイベントの帰り、エレベーターのドアが開いたら目の前できったねえキスが繰り広げられていたのを思い出しました。


「口腔とビル」繋がり

てのひら感想を書いていると、小蝿羽虫の類がやたら顔の周りを飛び回るのですよ。
あっちこっちバンバン叩きながら、大騒ぎで感想書いてます。

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May 21, 2008

週刊てのひら怪談感想13 うぐいす餡パン/鬼の捨て子

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作品を読む→「うぐいす餡パン」不狼児&「鬼の捨て子」神森繁

うぐいす餡パン 不狼児 
 さすが不狼児さん、かわいらしくは進まない。
 「オー ケキョ」が「オッケー」とか「おお、そうだ」とかに読める。
 興味深いのは、たぶん読む人によって怖いと感じる箇所が違うだろうということ。生きていると思いながら感情移入しない主人公、妹が食べた様を想像、妹が「オー ケキョ」と応えるところ、瓦礫の下から聞こえるうぐいすの声……このあたりを私は気味が悪いと感じた。もしかしたら、わけわからない、どこが怖いのかわからないという人もいるかもしれないな。
 折りしも大陸での大地震の惨事が伝わってくる日々、これを読むにはちょっとタイミングが良すぎたというか悪すぎたというか。
 ……にしても、不狼児さんたら、プロフィール素敵すぎる。

鬼の捨て子 神森繁
 神森さんの作品が結構好きだと、今気づきました。(遅)子供のころの五感をよみがえらせてくれるのです。
 「しばらく観察した後、そっと蓑虫を摘み上げる」とか「鳴き声は、さっきよりも大きく、より悲しげに、夕闇迫る山の中に響いた。」などで、雑木林で遊んだときの気分を思い出して、シンパシーを感じながら読むことができた。
 異論はあるだろうけども、童話にも通じる読み心地の作品だと思う。だから私は好きなのだと思うけども。神森さんに失礼を承知であえて具体例を出せば、あまんきみこさんの「車のいろは空のいろ」あたりだろうか。


「鳴き声、プロフィールおばあさん」繋がりw


さてここで、お祝いをば。
てのひら作家の、田辺青蛙さん、勝山海百合さんが大きな賞をお獲りになりました。
田辺さんは、「生き屏風」で第十五回日本ホラー大賞短編賞
勝山さんは、「竜岩石」で第二回『幽』怪談文学賞短編優秀賞
おめでとうございますー!
ほんとうに、てのひらの周りではいい風が吹いているようです。
お二人にはこれからも、てのひら作家を引っ張っていただきましょうw
『てのひら怪談2』に書いていただいたお二人のサイン、早くもプレミアもの?!になりました。(笑)

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週刊てのひら怪談感想12 ボトボト/生兵法

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作品を読む→「ボトボト」酒月茗&「生兵法」樋口摩琴

ボトボト 酒月茗
 怪異の中身よりも、語る人の表情を巧みに描写することで、雰囲気を出すことに成功していると思う。
 基本的に穏やかでいることを好む私は、感情があまりにも高ぶって興奮している人を見るのが、苦手である。(たとえ嬉しいとか楽しいとか陽気なことでも) 相手が興奮すればするほど冷めるか、或いはある種の恐怖(身の危険)を感じる。
 この作品の語り手は、自分から「怪談を」と伯父さんに話をねだっているが、とても冷静に彼の話し振りを観察している。おかげで、私も語り手と視線を共有して伯父さんの様子を見ることができた。

生兵法 樋口摩琴
 霊感の類を持ち合わせていないので、このような話は興味半分にしか読むことができないな。
 お祓い?の失敗→反省、主人公の自己完結というか一人納得した様子を見せられて終わってしまったから、金縛りや霊が通るときの生々しい描写が霞んでしまったように思う。


「霊が出たがる」繋がり?

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てのひら怪談(文庫)


 余談。前に、「1より2のほうが好きだ」ということを書いたけれども、補足というか。
 その後、『てのひら怪談』の感想をどこかのブログで見つけて、非常に納得したのだけれど、そのときブックマークなどをし忘れたので、行方不明になってしまったのです。嗚呼。
 実話と読める話から段々とフィクションを強めていく構成は、いわゆる実話怪談の本と思い込んだ人をも引き込む、というような内容だった(と思います)。
 私は、『てのひら怪談』をろくに認識しないまま、自分で創作の怪談っぽい話を書き、それが載ることになったので、どうやら読むときも「小説っぽい」読み口であることを求めていたのですね。無意識のうちに。ひとつ自分の先入観に気が付くことができました。
 
 実は、1のほうが好きな作品の好き度が高いです。苦手な作品も1のほうが苦手度が高いのです。(ちなみに、1で苦手な作品と2で苦手な作品は、苦手や嫌いの質が全く違います。)
 つまり1は、好きと嫌いの幅がとても大きかった。上で酒月さんへの感想にも書きましたが、「穏やか」であることを重んじる傾向にある私は、全体の読み心地は好き嫌いの幅が小さい2のほうがよかったと判断したらしい、とさらに自己分析をしてみました。(笑)

 1と2の総括な話をしている感想を見かけないので、なんだか一人で勝手に騒いでいるだけみたいで恥ずかしいです。うーん。こんな話いいのだろうか。


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May 12, 2008

週刊てのひら怪談感想11 スコープの空/ななかまど

webマガジンポプラビーチ「週刊てのひら怪談」の感想をひっそりと。
ちなみに不定期更新です。

作品を読む→「スコープの空」君島慧是&「ななかまど」勝山海百合

スコープの空 君島慧是
 ラーメンやカキ氷と、星や宮殿から感じるギャップがそのまま生と死の対比にもなっていて興味深い。主人公は一種の葬送の儀式をしたとみなせるわけだけども、それを送られる姉の希望通りに行っているところがなんとも言えずしんみりした。
 水玉のワンピースが何色だかは書いていないけれど、なんとなく空色をイメージしながら読んでいたら、「紙の夜は白い雲の浮かぶ青空に変貌していた。」という一文に到達して、ちょっと驚いた。


ななかまど 勝山海百合
 幽霊さんの独り語り(?)というのもよいなあ。ななかまどに纏わる怪異ではないのに、タイトルに持ってくるのも、グッとくる。それだけこの幽霊さんにとって思い出深いことだったのだろう、というか、やけに共感してしまった。
 いじらしさを誘うためか、いささか乙女過ぎるような気がしなくもないけれど。……って、なんだか海百合さんの作品にはいつもこんなことを言っている気がする。申し訳ない。
 隅から隅まできちんと統制が行き届いて抜かりがないので、かえって作者の「こう読ませたい」という意図が見えすぎるという印象があるのです。ひと目で見渡せる800字だから、というのもあるかもしれないな……。


「少女の幽霊」つながり

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May 11, 2008

週刊てのひら怪談感想10 星降る夜に/とり憑かれた

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作品を読む→「星降る夜に」白ひびき&「とり憑かれた」雨川アメ

星降る夜に 白ひびき
 ひょうきんな語り口で、読後もとぼけた味わいでとても楽しい。
 ちょうど主人公の周囲に、猫たちの向かう異界の入り口があったのだろうな。我妻さんの「亡者線」や腑楽さんの「野良獅子」もそうなのだけど、異世界の入り口が出てくる作品にはとても惹かれる。たぶん安房直子さんらの童話の影響。

とり憑かれた 雨川アメ
 主人公本人は多いに恐怖を味わっているのに、ハタから見ている私は「なにやってるんだ、間抜けだなー」と感じるタイプだ。語られる内容と、読み手が受ける印象にギャップがある。
 そういえば、これと似たような気分になったものがあるよなーと思ったら、春画や官能小説だった。恐怖もエロスも誰もが本能的に持ち合わせているものなのに、他人から見ると滑稽にさえ見える時がある。


「憑かれた気分」つながり。

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てのひら怪談百怪繚乱

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May 08, 2008

週刊てのひら怪談感想9 糠漬け/腕の記憶

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作品を読む→「糠漬け」夢乃鳥子&「腕の記憶」グリーンドルフィン

糠漬け 夢乃鳥子
 前半、糠漬けのおいしさが丁寧に描かれているので、それとわかったときの気色悪さ、さらに正体がわかり謝っているのに尚それを食べたがっている主人公の様子(そんなに旨いのか!)がいちいち鮮やか。うーん。食べてみたいような気になってくる。胡瓜のようで肉のようで……ごくり。

腕の記憶 グリーンドルフィン
 「登った奴」は祖父じゃないのか?と思ってしまうが、それは置いておいて。タイトルが「家の記憶」ではなく「腕の記憶」なのが、興味深いと感じた。助詞「の」の解釈によって、二通りの意味があるタイトルになっている。祖父の言葉をそのまま受け取れば、覚えているのは家なのだから「(家が覚えている)腕に関する記憶」ともとれるし、実は「腕の持っている記憶」なのだ、ともとれる。
 腕の持っている記憶とはなんだろう、と考えるとちょっと悲しい気持ちになる。


「腕」「祖父母」つながりでした。

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週刊てのひら怪談感想8 笹首/ラヴィニアの子

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作品を読む→「笹首」ヒモロギヒロシ&「ラヴィニアの子」小栗四海

笹首 ヒモロギヒロシ
 唯一全部クリアしたRPGが『俺屍』だけ、それ以降ゲームに嵌っていないイガラシです。(いらん情報) というわけで、『信長のなんたら』はもちろんやったことがないわけなのだが、そこは関係なく楽しめるのがさすがのヒモロギ作。
 それにしても才蔵の指物が口からって光景は、すごい迫力であるし、恍惚とするものがある。主人公ではないが、ちょっとエキサイトしてしまった次第。(笑)ああ、いかん。感想にもなっていない。

ラヴィニアの子 小栗四海
 体験したことがなんだったのか自分でもよくわからない、読んだこちらもよくわからない。クトゥルーは全然知らないので、語るのはやめておく。
 「ぶっつけ落ち」という言葉がここで適当かどうか、ちょっと疑問に感じた。落語でいう「ぶっつけ落ち」って互いの言うことが食い違ったまま落ちる感じだと思うのだけど……。あ!そうか、最後の子供のセリフが「ぶっつけ落ち」なのか。と書きながら思いましたが、自信はないです。


 「架空世界から召喚?」つながり

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April 25, 2008

週刊てのひら怪談感想7 聞こえていますか?/白い人

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作品を読む→「聞こえていますか?」池田和尋&「白い人」六條靖子

聞こえていますか? 池田和尋
 うーあー。これはただ事故の凄惨さばかりが残ってしまった。営業部長が不幸に見舞われるだろうということも、途中でわかってしまった。ただ、バスガイドさんの第一印象と、その後の変貌ぶりの描き方が鮮やかだと思った。
 淡々と丁寧語で語っている語り手から感情が伝わってこないのも、ちょっと怖い。

白い人 六條靖子
 「生理が始まると見えなくなる」のだから、生理時に白い人も排出されるようなイメージを持ったのだけれど、喋らないと増えるというのだから月経のメカニズムとはあまりリンクしていないらしい。 このあたりは人によって感覚が違うかもしれないけど、「生理前の現象である必要」が感じられなくなってしまった。
 最後の紙切れは面白い。後の席の女の普段の人柄を匂わせるようにも、逆に怖さが増すようにも読める。


「女の独白」つながりでした。

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April 23, 2008

つまり、3が愉しみだ、という話。

 ずっと個々の作品の感想を書いているけども、そういえば一冊の本としての『てのひら怪談』や『てのひら怪談2』の感想を書いていなかったな、と思ったのでそんな話。
例によって、便宜上『てのひら怪談』を1と呼びます。

 個人的には1のほうが、全体の評価は少し低いです。1は通しで読んだときに、前半と後半でかなりテイストの違いを感じていました。前半は、流れというかテンポがバラバラでノれなかった。個々の作品の良し悪しではなくて、作品たちのエネルギーとか向かう方向があっちこっちだったので、振り回された感じでした。
 後半になるに従ってテンポよく面白くなっていったので、「前半の、落ちつきのなさはなんだったんだ?」と、余計にそのギャップを感じ、戸惑いや違和感を持ちました。
 また特に複数掲載の作者さんの個性やエネルギーが過剰に感じるところがありました。相当、くどかった。(笑)
 この時はまだ、それぞれの作家さんの個性や持ち味などまったく知らなかったし、知ろうともしていなかったから「なんでこの人はいくつも載ってるんだろう、しつこいなぁ」と思いながら読んでいました。(ごめんなさい。笑)

 一方、2のほうは、一人一作づつ収まりよく配置されて、1のときのようなガタガタとしたテンポの悪さを感じることもなく、しかし所々にしっかりと盛り上がりのある流れでした。
 最終話の「死霊の盆踊り」は「赤き丸」にも繋がるような読後感があって(「赤き丸」にも、踊りやダンスっぽい雰囲気がある)ぐるりと輪になって、「百人百話の百物語」というコンセプトを明確に感じることができました。
 百話で一冊の本、百話でひとつの作品であると、すとんと納得した。

 3の刊行と収録作家がすでに発表されましたが、おそらく1とも2とも違う明確な意図で編まれることと思います。
 1では多様な怪談を、2では800字小説の広さ深さを見せてもらいました。
 3は、より東雅夫さんのコンセプトを前に出した、アンソロジーの醍醐味が感じられる構成になるんじゃないかと、勝手に予想しているのですが、どうだろ。(笑)
 ともかく、800字・怪談・大勢の書き手等々、とっても切り口の多い「てのひら」なので、一冊づつの違いがどうでるか、愉しみに待つことにいたしましょう。

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週刊てのひら怪談感想6 整列/あわてもの

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作品を読む→「整列」木村小鳥&「あわてもの」岩里藁人

整列 木村小鳥
 妙ちゃんの金魚を使った合図が何かを意味するものであったのかどうかは、主人公もわからないようだけれど、たぶんそんなことは関係ない。妙ちゃんが約束を守ってくれた、自分を思っていてくれたと実感できたことが何より主人公にとって意味のあることだと思う。
 木村さんがどの程度意図して書いたのかわからないけれど、「骨肉種」と「整列して泳ぐ金魚」は視覚的に重なる部分があって、少しぞっとした。骨の硬く真っ直ぐな感じや血液・肉の赤と、まっすぐ並んだ赤い金魚。
 そして水槽を抱える主人公。金魚たちを直に抱きしめることはできない。妙ちゃんにはもう二度と触れることができないのだという事実を突きつけているようにも見えた。

あわてもの 岩里藁人
 チャレンジャーだ。自分の寿命なんか、おそろしくて私は聞くことができないもの。(笑)けれども、あちらの人との二人だけの会話、ちょっと羨ましいな。
 この短い字数の中で、登場人物の人柄を見事に描いている。冒頭と最後に登場する「そそっかしい叔母であった。」のエピソードがほどよく呼応しているから、単なるオチではなく、主人公と同じように叔母さんを偲ぶ気持ちで読み終えることができた。


「死者からのメッセージ」つながりでした。

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April 21, 2008

週刊てのひら怪談感想5 家族の肖像/されどわれらが日々だった

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作品を読む→「家族の肖像」朝宮運河&「されどわれらが日々だった」江崎来人

家族の肖像 朝宮運河
 これは怪異が二段階に起こっているのだけれども、最後の写真の件は、ベタ過ぎ&しつこく感じた。うーん、でも小学生の頃に聞いた「怖い話」の気分で読むと、それなりに効果的な気もするぞ。
 気になったのは「奇異な眺めにSたちは黙りこんでしまった。」というところ。ここはただ視覚的に不気味だったから黙ったわけではないだろう。色々な要素があると思うけれど、旅行の気分を挫かれたという若者のわがままな心理も少なからずありそうだ。
 「奇異な眺め」ゆえに「黙った」と読める書き方で済ませてしまうのは、勿体無い。このへんの若者たちの心の動きを汲める深みのある表現であってほしい。たぶん「奇異な眺め」という言葉がないだけで、印象は違うんじゃないかなあ。どうだろ。

されどわれらが日々だった 江崎来人
 ここはガロへの投稿を機にデビューした佐々木マキ氏のファンサイト内ノブログであるからして、もちろん私は白土三平氏やつげ義春氏のマンガが収録されている月刊漫画ガロを数十冊所有している。江崎さんは、私の両親よりも年上のようだから、40年も前のガロを持っている私のほうが変わり者であろう。(笑)
 病床の友人は、自分の状態がつげ義春「ねじ式」の主人公と重なることに気づきながら、死が近いゆえか具体的に思い出せないでいるわけだ。(タネ明かし失礼)
 彼がこのもどかしさをどうやって一年も前にワード文書に託したのかや、線描画が現れた不思議がこの話で起こる怪異の中心なわけだれど、このあたりはただ現象に飲み込まれておけばよいだろう。
 興味深いのは、この話のエネルギーやテンポ感は、作品中「新しい」とされているつげ漫画とは全く重ならない。(テイストや雰囲気は違うけれども)むしろ作中で比較されている白土漫画のほうが近いと感じる。新しいものに飛びつき賛美しつつ、結局は古いものが心身に染み付いているような人々への皮肉にも読めた。
 

「青春」と「海沿い(「ねじ式」の舞台は漁村です)」つながりでした。

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April 20, 2008

週刊てのひら怪談感想4 野良獅子/家賃滞納者CO

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作品を読む→「野良獅子」立花腑楽&「家賃滞納者CO」クジラマク

野良獅子 立花腑楽
 獅子の口の闇と、そこにある獣の気配がなんとも魅力的。そのまま吸い込まれたらどこへ行くんだろう。
それにしても、獅子は誰を探してるんだ。
 獅子舞の獅子は、たぶん文殊菩薩との関わりから「頭がよくなる、賢くなる」という云われになったのだと思うけど、噛む相手を間違えたり片言だったりするこの獅子は、あんまり賢こそうには思えない。つまり、獅子の姿を借りた何者か、と思いながら読んだのだけど、それが何者かは明かされなくても問題ない。
 主人公と同じように、呆然と獅子を見送った。


家賃滞納者CO クジラマク
 タイトルのCOはコンクリートか。
どろどろのセメントコンクリートを頭に塊状態にするのは難しそうだなあ。とか余計なことを思ってしまいましたが、それは置いておいて。
コンクリートで頭を覆っていたら、普通生きていられない。息できない。この状態の人は、『てのひら怪談』収録のクジラマク「生ゴムマニア」の人とも共通性を感じる。窒息状態になにかそそられるものがあるのでしょうか、クジラマクさん。
 近江志穂という名前になにか仕掛けがあるかなーと思ったけれど、頭は回らず。獅子に頭を噛んでもらったほうがよさそうだ。

「被り物」(?)と「去っていく」つながりでした。

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April 18, 2008

週刊てのひら怪談感想3 末期/できるかな

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作品を読む→「末期」夢乃鳥子&「できるかな」田辺青蛙

末期 夢乃鳥子
 夢乃さんの文章の美しさはいうまでもないのだけれど、この作品では辛夷の花が雰囲気を出すのに一役買っているだろう。白くて丸みがあって、ぽとりと落ちる花。季節感はもちろん、幼くして死にゆく主人公と重ね合わせるとなお切ない。
 予言したことを主人公が覚えていないのに、「予言」という一言でそれを思い出すという流れが面白いな。そして「予言なんぞしたばっかりに」が余韻を作り出していると思う。予言をしなければ、この子は死なずに済んだ?どんな予言を言ったのだろう、と。
 もちろん別の見方もできる。「予言なんぞ」くらいしか祖父は家族を慰める言葉が見付からなかったのだろう。人が死ぬのは悲しい。若い人だとさらに辛い。けれども、遅かれ早かれみんな死ぬのだ。この家族のように静かに悲しみに沈むさまを丁寧に描いていることそのものが、とても好もしく思った。

できるかな 田辺青蛙
 水に纏わる不幸を、湯呑茶碗が予言している。小技が効いているなあ。ちゃんと水を入れるものに件を住まわせてる。
 この湯呑を持つべくして持った、というか、この湯呑は主人公に予言を言うためにうまれたというか、そんな因果とか縁を感じさせる。
 ぱっと見は違う形だけれど、そういえばてのひら怪談収録の「生き血」やてのひら怪談2「幽霊画の女」もある種の因果応報譚で、人と人、人ともの、さらに時の因縁をさりげなく描いている作品が見受けられる。このあたりに思いを馳せながら読むのも田辺青蛙作品の味わい方のひとつかも。


「予言」つながりでした。

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April 15, 2008

週刊てのひら怪談感想2 亡者線/階段の途中

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作品を読む→「亡者線」我妻俊樹&「階段の途中」不狼児

亡者線 我妻俊樹
 幽霊亡者の類はそれ自身も「無言」で、また「静かで暗い気配」を好むという先入観があったので、酷く喧しい踏み切り(喧しくない踏み切りなんて偽物だ)の中を通過していく光景は、とても新鮮に感じた。
 踏み切りというのは、境界自身が境界であることを主張する数少ない存在だろうな。日常にも境界や、境界のように扱ってしまうものがさまざまある……たとえば敷居や鳥居や扉等々……けれど、踏み切りほど自己主張する境界はない(それが踏み切りの仕事なんだけどさ)。
 この家の敷地を通過する亡者の列は、家の境界である生垣やブロック塀は無視する癖に、自分たちが通る道にはしっかり境界を設けて遮断する。それも一番大騒ぎな「踏み切り」を用いて。なんて図々しい亡者たちだろう。(笑)

階段の途中 不狼児
 「階段にとらわれていた時間が思ったよりずっと長かった」のに「誰に訊いても、自分には失踪した期間などなかった」。
 周囲の人々の証言にも関わらず、H君は己の体験や感覚に非常に忠実である。年をとったと感じるのを階段にとらわれた時間が長かったせいであると実感し、同じことがもう一度起きれば帰れないと確信している。
 これまでに読んだ「てのひら怪談」や「てのひら怪談2」には、「あれは本当に起きたことだったのだろうか」と体験した主人公も確信が持てていないであろう話もあった。読み手である私(怪談フリークでない)も、その儚さや幻か現かわからないというところに惹かれることも多い。
 ところが、本作はH君が強い実感を持っていることがやけに強調されている。主人公にこれだけゆるぎない心持ちにさせる現象だったこと、ということが現象の内容以上に不気味に感じた。
 


「異界の入り口」と「濁った目」つながりでした。

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April 13, 2008

週刊てのひら怪談感想1 とりひき/地獄を見たいか

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作品を読む→「とりひき」勝山海百合&「地獄が見たいか」黒史郎


とりひき 勝山海百合
 最初、主人公が男の子だとばかり思っていたので、本筋とは違うところでびっくりしてしまった。それはさておき。
 ケーキと芋の対比の鮮やかさは言うまでもない。ケーキが腐っていくにつれ、蒸かし芋への思いが深まる。それは同時に主人公の生命の危機も予感させる。
 本当に神様と取引きをしたわけではないと知りながら、「その一年」に思いを馳せる主人公の気持ちはよくわかる。祖母は孫が助かればそれでよく、その間の経緯なんて孫に聞かせようとは思わなかっただけなのだろう。もう十分怖い思いをしたのだから、わざわざ大人側の騒ぎをアレコレ吹聴する必要はない。けれども、その冗談めかしてごまかしたつもりの言葉が、主人公にとってはかえって切なさを呼ぶ一言になってしまったわけだ。

地獄を見たいか 黒史郎
 やたら「目」が出てくる作品です。魚の目、木目、祖父の目。どれが一番怖いかと言ったら、ここは「祖父の目」でしょう。
 すらっと読むと、「この祖父は本物の祖父か」と考えたくなる。幽体離脱したんだろか、なにかのあやかしか、と。でもそんなことよりも、子供の頃に持っていた老人に対する不気味な印象を、主人公と共有して体感するのが、この作品の一番の愉しみかたかもしれないなあ、と思う。


「祖父母」と「食べ物」つながりでした。

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January 20, 2008

てのひら怪談 感想その9

 最後です。当分感想書きはしないぞ。さすがに飽きた。(笑)読んでいただいた方はもっと飽きたことでしょう。長い間お付き合いありがとうございました。この記事を書いている最中、ノートパソコンのプラグがゆるんで、電源落ちました。ビビりました。

 週刊てのひら怪談に、次回拙作「回帰」と立花腑楽さんの「龍宮の使い」が掲載予定…らしいです。29日に、更新??(推定)。

 ・自分のメモ用に、お気に入りに★印をつけてます。「良い」ではなく「好き」であることをご承知置きください。

お化けの学校 田辺青蛙
 大変ですなあ、あちらも。(笑)このタイトルは、どうしたって「ゲゲゲの鬼太郎」の主題歌を連想するけども、その期待を外さぬまま、違うテイストが出来上がっている。ちなみに、世代的には「吉幾三」なのだが、子供のころから熊倉一雄さんのお声が好きなので、そちらに一票。

神を見る人 林不木
 うわー。すごい「濃い」です。老人の描写、やけに手についての記述が多いと思ったら、最後にそんな。語り手の雰囲気もなにかイヤな感じ…偉そうというか、自分だけは不幸に遭わないと思い込んでいそうな…も妙に不気味。

魚怪 勝山海百合
 これは読ませますね。この最後の一文で、すべてバラバラになったような気がして、しばらく呆然としてしまった。

猫笑 不狼児
 前作もそうであるけれども、「男の執着」が描かれている。こちらはさらに狂気がかっていて、つかみどころがありそうでつかみきれない状況と相まって、不気味。

ブラキアの夜気 小栗四海 ★
 まずタイトルのリズムが好き。このエキゾチックな雰囲気は、1、2を通して独特で印象的だ。冒頭の文は、まともに読もうとすればするほど意味がわからなくなるのだけども、それ自体がこの話の雰囲気そのものだ。
 白と黒がくっきりと深い。

ボコバキ 池田和尋
 畳み掛けるような長い一文がボコバキです。(?)描かれているボコバキに嫌悪感はさほどなく(それが主題ではないのだろう)知らないままの人、知ってしまった人、知らせた人の三者を、読者が俯瞰することによって苛立ちや嫌悪を抱くようなカタチになっている。そこには色々なアイロニーも含まれていて……。

大樹 向井野海絵
 少々アニメチックな印象なのだけども、空気や匂いも丁寧に描かれているのはよいな。雰囲気を描くことには成功しているけど、内容も作品も恍惚としすぎているような。恍惚とした内容な上に、書き手のナルシシズムもみえてしまうと、ちょっとツライ。

呪いと毒 勝山海百合
恐ろしいのは毒物ではなく、それをどんな人がどんな意図を持って使うか、ということだ。雰囲気たっぷりと書いてあるけども、説教臭い感じがなくもない。

祭りの夜 不狼児 ★
 繰り返される「長い」の言葉が、非常に効果的、蛇の長さや果てしない交わりを強く印象付けられた。
異類婚姻譚は珍しくないけれども、交わり自体を想像したときに漠然と思っていた雰囲気(その快楽とか妖しさとか)を見事に表現している。

寄り来るモノ クジラマク
 前作を読んだあとだと、なんだかスケベそうな祭りを想像してしまうのですが。(笑)でもまあ、祭というのは、結婚相手を選んだり、豊穣を願ったり、なんだかんだと性的なニュアンスも持っていたりするわけで。(言い訳)
 「海蛇」と呼んでいるそれについて、それ以上追求しないのが暗黙の了解、という感じが暗くて怖い。
 
あめ玉 田辺 青蛙 ★
 少女同士の、媚を売るようなじゃれ合い。その年頃をとうに過ぎた者から見ると気恥ずかしく、目を逸らしたくなる。そこにその年代だけのエロスがあるのを知っているから。

マンゴープリン・オルタナティブ 不狼児
 あっはっは!(笑)この壮大さ。空海とミサイルって。
 でも、シャレにならないことがそこかしこに潜んでいて、笑いながら怖くて仕方ない。


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January 16, 2008

てのひら怪談 感想その8

週刊てのひら怪談の更新がはじまりました。『てのひら怪談2』の作者による新作怪談が毎週2編づつ公開されます。

てのひら怪談2レビューリスト さらに追加版
 秋山真琴さん
 酒月茗さん
 松本楽志さん
 根多加良さん
 峯岸さん
 マンジュさん
 間倉巳堂さん
 添田健一さん(全作じゃないよ)
 水棲モスマンさん
 レビュー(嘘)だそうですが、創作者としてはうれしいお返事です。
 「幽鬼の源」
 「てのひら怪談2」感想用ブログ


山の中のレストラン 白ひびき
 尿意と父の愁いた言葉が腹にずしんと堪えます。レストランについて父が何か知っていそうだけど、結局何も聞けないんだろうなぁ。

田んぼ 痛田三
 ここまでいかなくとも、たった一つのゴミがゴミを呼ぶのは、事実ですな。
 段々と加速するゴミに合わせて、描写や書き方も工夫が凝らされている。狙い過ぎというか、テクニカルすぎな気もしなくはないがテンポが弛んだ途端にこの結末。巧さとやりきれなさに唸りました。

とある民宿にて 梅原公彦
 旦那と主人公が女将に弄ばれているだけにも見えたり、それぞれの言い分に矛盾があるようにも読める。でも女将、旦那、客である主人公、皆それぞれの現実を生きていて、その言い分はそれぞれ「正しい」のだという気もする。
 翻弄されたのは、読者かも。

夜釣りの心得 ヒモロギヒロシ
 えーと、これは若干、判断に困った。こーいう〆方は、アリなのかしらん。こんな怪異が起こるよ、恐ろしい目に遇うよ、と脅かされた……だけ、という話。
 この話を聞かされたこと自体、怖い体験だったということなんだろうけど。民宿の主人の話も、怖い話としてはステレオタイプだし。まぁ、ここは奇をてらうようなエピソードである必要はないと思うけど。

食堂にて 斜斤
 ナンデスカ、ソノ「棒状のモノ」って。
 人見知りのせいか、知らない店に入るのが、とてもイヤな時がある。とくに地方の観光地の食事処。店の人が胡散臭いんじゃないか、と懸念する。そんな不安を現実にしたような話で、参った。
 ちなみに、愛想がないのも困るが、必要以上に人懐っこい店員はもっと苦手だ。

料理屋 沢井良太
 どういう経緯で潰れたのかはわからないけども、人の怨念というより、料理屋そのものとか道具の念が見せた怪異、という印象だった。
 段落がないのだけど、臨場感があってよかった。

シルエット 斜斤
 これはなぜかウキウキしてしまうな。野坂昭如作詞「おもちゃのチャチャチャ」じゃないが、人のいない隙に、モノたちがどんな時間を過ごしているかと考えると楽しい。……これも付喪神とかアニミズムみたいな感覚が染み込んでいる証だろうか。

休憩室 貫井輝
 怪談という枠で描かれているけども、現実すぎる現実であるよな、こーいう過酷な労働状況。食事や睡眠もままならない日々って人間として以前に、生物としてちゃんと生きてないじゃん!どうしてこういう労働をしなくちゃいかんことになっちゃったんだろ、世の中。
 黒澤明の「天国と地獄」の赤い煙じゃないけども、バナナの黄色だけが、やけに鮮烈。

心臓カテーテル室で やまぐちはなこ
 科学的であるのは当然だけども、同時に人間臭くあって欲しいです、お医者さんには。さびしいエピソードでもあるのだけど、ほっこりともする、不思議な読後であった。
 うーむ、でも「子供が走り回ってた」などと患者に言われて、「嗚呼この人は」といちいち思ってしまうのは、ツライだろうなあ。
 
茉莉花 我妻俊樹
 うわ…。「てのひら怪談2」に掲載された拙作も人形モノだったけども、もちろん人形は大の苦手です…。リカちゃん人形などで遊んだことがない。
 「モデルがいる人形」だけでも怖いのに「そのモデルが自殺」しているだなんて…。ああ、もう。怖すぎて書くことがない。(笑)
 人形がなぜ怖いかって、「異界の者の殻だけ」に見えるからで、ご本人は異界からこちらをじっと観察しているような気がするのだ。本人が見てるのに平気で愛でたり着せ替えたり写真を撮ったりなんて、畏れ多くてできない。つまり、強く感情移入しているという点では好きな人と変わらないんだと思う。

赤い着物の女の子 大野尚休
 うーん、こちらの興味のない自慢話を聞かされたような気分。「例の話」そのものを全然察知も推察もできないので、ナンノコッチャ。という感じである。今ちょっと調べたところ、座長というのはどうやら稲川さんのことであるらしいが。
 加えて「視た」という書き方とか、一人称が「自分」であることとか、どうも肌に合わない。

カオリちゃん 須吾 托矢
 童謡調。童謡っておっかないのが多いよね。マザーグースもそうだし、洋の東西や時代を問わずこーいうのはあるもんなんだろう。
 だんだん「なくしもの」がでっかくなるのが、イヤですねー(褒めてます)

少女と過ごした夏 伊藤寛 ★
 ああ、これはあざとい。狙いすぎだろ。けど好きだ。(笑)女の子ならば幽霊だろうがなんだろうが(ヲイ)
 ちゃんと「さよなら」が言えなかったからこそ、忘れがたい思い出になるってこと、実際にあるよなあ。私は恋と猫にあります。(笑)この話では猫のことを思い出した。すまんな、初恋の君よ。

止まない雨 暮木椎哉
 雨と幽霊の憂いとか儚さとかが合いまって、美しい。しっかし、こーいう幽霊はたいがい美人さんだよなあ。いや、私が書くときもそうするけども。(笑)
 こーして過去に現実に起こった事故と、体験した幽霊や怪異を結びつけることで、「同情」したり「納得」するわけだけども、納得したいというのは、どういう心理からなんだろう。結局、怖い思いをした己を慰めるため、ってことなのかな。経験がないからわからないけど。


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January 15, 2008

てのひら怪談 感想その7

週刊てのひら怪談の更新がはじまりました。『てのひら怪談2』の作者による新作怪談が毎週2編づつ公開されます。


いこうよ、いこうよ 久遠平太郎
 中年オヤジ氏は、誘いを断われなかった、のだろうか。その心中を察すると哀しくなる。
 んーでも、若干不快感を伴う作品だった。なんだろ、やっぱり安易に作中で殺さないでほしいというか。いや、でも作中で人が死んでも不快ではないものもあるし……「中年オヤジ」をばかにしているように見えるからかなあ。うーん、もやもやする。
 怪談だからその中で起きる現象自体が不快なのはアリだけども、怪談だからこそ、書き手の価値観とか死生観に疑問を持ってしまうと、あまり気分がよくないようだ。

夜寒のあやかし 江崎来人
 あー。作中の柳瀬川はうちの近くも流れている川でして。こーいうマイナーなのに、自分には馴染みがある地名等々が出てくると、非常にナンだね。(笑)しかも川。東上線の志木や柳瀬川とは少し距離があるのだけども、川って繋がってるじゃん?(笑)
 2のときに、名前や地名を××とかイニシャルにすることに疑問を持った作品がいくつかあるけども、実際にある名前、実際にありそうな名前をつけることで得られる「効果」ってあると実感した。

東京駅の質問 君島慧是
 こーいう、タイムトリップを予感させる作品に、弱い。最後の一言が堪りません。
 といいつつ、鹿鳴館と東京駅が「友」なのは、ちと不自然な気がしないでもない。コンドルと辰野は師弟関係だし、鹿鳴館は取り壊しは1940年だけども1890年に払い下げられたから、「現役」だった時期は東京駅(1914年竣工)と重なっていないとも言えるわけで。そもそも東京駅は100年経ってない。イメージ的には、よくわかるのだが。

白昼 朝宮運河
 亡くなった人を一々意識していたら、とても電車になんか乗っていられないけども、無感覚すぎるのもどうだろうと考えてしまった。
 誰かに自分の存在を知ってほしいと思うのは、こちらでもあちらでも一緒なのかなぁ。

新幹線 正本壽美
 これは実際体験したら、後味悪いだろうなぁ。見えなくても殺されたことを確信しちゃうような声。声だけだと余計想像力が……。嗚呼。

朧車 吉野あや
 付喪神的で色っぽくもアリ、胸キュンなお話でした。新幹線と主人公と「二人きり」。いやん。(?)
 妖怪の「朧車」はでっかくて図々しいイメージ(妖怪は詳しくない。勝手なイメージです。)なんだけども、新幹線は正反対だなあ。(笑)

見上げる二人 朝宮運河
 本当に見ているだけで、何もしていない二人。見届けることそのものが役割のモノが、いるんですな……。

何もできなくて、ごめんなさい。 守界
 前作は、「見届ける」のは、あやかしの存在だったけど、今作は違う。読者も自らが「見届ける」側に立つことを想像してしまう作品だ。
 主人公は気が付いて、涙を流した。それで役割はまっとうできているんじゃないか。

漆黒のトンネル 井上尚紀
 車で水汲みに行くという状況がちょっと理解できなくて、そのまま読み進めてしまった。たとえば名水で話題だからとか、そういうことが一言あれば、よかったのだけれど。
 一度出てきたのに、もう一度行って、最初の目的を果たさないまま返ってきてしまう、という二人の行動ばかりが気になって、犬に吠えられるとか音がするという現象に、意識が向かなかった。

乗り移るもの 秋芳雅人
 こうやって次々と乗り移っていく女は、一体どんな人だったんだろう。何か探しているんだろか。
 にしても、一度撒いたと思ったソレが乗り込んできたと知ったときの恐怖は、想像もしたくない。

生ゴムマニア クジラマク
 「済」。えええ~。(涙)
このゴム、タイヤの質感や匂いも連想させるので、事故の凄惨さやグロテスクさに拍車を掛けていると思う。
腕がないとか、顔に開口部がないとか、事故が起こる以前から既に普通に生きている状態と思えないこのライダーだけども、怖いのはライダーの存在の謎さでも、事故の様子でもなかった。主人公が「発見→驚愕→恐怖」を繰り返すことが、緊張感と恐怖をもたらしている。

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January 13, 2008

「てのひら怪談」が怪談

 今日は感想をおやすみして、頂いたコメントのお返事にかえて、余談を色々。

 考えてみるに、「怖い話」と「怪談」を、私は別物に捉えていたようだ。
 主な理由は二つ、一つ目は「作品であるかどうか」二つ目は「怪しい話と怖い話は違う」ということ。
 個人的見解、というより先入観に近いけども、頭を整理するためにもちょっと書いてみます。

 私がビーケーワン怪談大賞を知る前、つまり2007年の7月以前に「怪談」として認識していたのは、小泉八雲の怪談、牡丹灯籠、四谷怪談やら皿屋敷やら累ケ淵……のみだった。
 学生時代、日本文化、とくに近世の芸術や芸能を中心に広く浅く勉強していたので、これらは大学の幻想文学や演劇史などの授業中に、初めて内容を知ったのである。(詳しくはないよ)
 これらは八雲や南北や圓朝というクリエイターによって調えられ味つけられ、さらにそれを数々の演者や話者が舞台にあげてきた、文字どおり「文芸」作品だ。こーいう「作品」にまで昇華しているものが怪談と呼ばれるもんだと思っていた。漠然と、だけども。
 つまり「怖い話」は単に体験談で、人の創造や創作が加わららず、時の流れにも揉まれていないもの、と捉えていたわけです。これもなんとなく。

 二番目の理由「怪しいと怖い」について。たぶんこっちがメイン。
 怖い話は「怖い」というくらいだから、怖い体験であることや、読んだり聞いたりしたときに怖さを感じる、というのは重要だろう。そして心霊現象への興味・好奇心というのが、「怖い話」を支えているんだと思う。
 だけども「怪談」は「怪」。「怪しい」広がりも深みもあることばだ。色々な感情や感覚の中に内包する怖さに気付くことが、怪談の怪談らしさであり、愉しみなんじゃないか。

 牡丹灯籠やお岩さんも、恋があり哀しみがあり嫉妬があり、つまり人間同士のやりとりや営みから狂気が生まれたり死が訪れたりして、その延長に不思議な出来事や不気味な出来事が起きる。怪談において、幽霊や化け物のエピソードは、クライマックスやメインイベントではあるけども、テーマや核心ではない気がする。

 話の中にも外にも人の営みや縁があるかどうか。よい作品は人を繋いだり、別の作品を生むエネルギーを持っている。
 だから実話か創作かは、ミーハー的興味はあるけども、個々の怪談の良し悪しや存在意義にはあまり関係ないと思う。


さらに余談。
 私は、ビーケーワン怪談大賞を、松本楽志さんや添田健一さん経由で知り、〆切間際に一作だけ投稿しました。賞がつくとか本になるかもということは、全然わかってなくて、なんだか楽しそうだから仲間に入れてぇ〜と思って慌てて投稿したのです。
それ(「狐火を追うもの」)がてのひら怪談2に掲載された後、ここには詳しく書かないけども、冥土も巻き込んだ「縁」を感じる事実や出来事がいくつか起きました。
 私にとって「てのひら怪談」そのものが怪談(現在進行中)なのです。

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January 12, 2008

てのひら怪談 感想その6

 さてさて。相変わらずのぬるぬるな感想でございます。
ご覧のとおり、評論とか分析ではなく「ひょーたんはこんなとこが着目したよ、こんなふうに思ったよ」というだけの感想ですから、クチコミの一つ、というような気軽さで読んでいただければと思います。

 ・自分のメモ用に、お気に入りに★印をつけてます。「良い」ではなく「好き」であることをご承知置きください。


おーい グリーンドルフィン
 通り過ぎたものを見送った時の状況もちょっと見たかったな。これだけでは「身震いするようになった」というほどトラウマになったことに共感できなかった。

さんぽ 粟根のりこ
 おばさんに話しかけられたことで、疑問に思っていなかったものの存在に疑いが生まれ、それを怖いと感じる……という構図。
 だけども、やっぱり私はこの本に800字の怪異「小説」を求めているのだな。怖い話体験談としてではなく。このように淡々と起きたことを述べただけのカタチだと、物足りないと思ってしまう。

踊る婆さん 白ひびき
 晴れ着でも選ぶようなウキウキした感じなのがオカシイと思いつつ、それが踊る婆さんとマッチしていて、なんだか楽しい気分。
 こーいう人を食ったようなセンスはかなり好きだ。

真夜中の散歩 岩里藁人
 やっぱり真夜中の散歩はよろしくないですな。
 アチラの世界から野次馬が集まっていると読めるわけで、このアパートの一室に何があるのか想像したくなってしまう。もちろんいいことではないと思うのだけど。

キミは本物? 梅原公彦
 彼を置き去りにしたという状況が腑に落ちないな。「慌てて追いかけてきたのだと言う」ということは、それなりに落ちついて彼と話をしているわけで、壕が見えて駆け戻った時も彼が一緒に走っていてもおかしくないと思ったのだけど。
 そうなると、結末がなんだか取って付けたように思い、逆に結末を認めて読もうとすると一連のエピソードが帳尻合わせのように感じてしまって。

秘密基地 堀井紗由美
 うわ、そんなにはっきりとラッキーだなんて言っちゃっていいんですかね。と思いつつ、この主人公にとってどれだけ石を投げたことと青木の死がショッキングな出来事だったのか、というのが最後の一文でわかる。事故にあったのを「石を投げたせい」にしておかなければ、その罰が自分に向かなかったことを「ラッキー」と言わなければ、精神的にやっていけないんだろう。結局一生、二つの出来事から解放されないんじゃないか、この主人公は。

錬想 加楽幽明
 こういう狂気は怖すぎて降参、なのだけれども、じゃあ現実にあり得ないか、自分には起こりえないか、と言われると否定できないから尚怖い。

カミサマのいた公園 神森繁 ★
 肉団子!!犬を食らうのには抵抗を感じないが、肉団子限定に衝撃が。(笑)なんかやたらグロテスクな言葉に感じてしまった、肉団子。なぜ。
 子供のころはいろんなものに神々しさを感じていたな。蜘蛛の巣の美しさを論じながら友達と通学したことなどを思い出した。
 最後の言葉はかわいいなぁ。と思ってはいかんのか?あれ?

人を喰ったはなし クジラマク
 これも初めて読んだときに参ったなーと思った。アイドルを食べさせるとき、食べるとき、それぞれに生じているエロチックな虐げ感と、非常に悪い読後がたまりませんな。

んんーげっげ 有坂 十緒子
 これってTさんをどう捉えていいのか、よくわからなかった。Tさんが何らかのチカラで事故を引き起こしたのか、Tさんが飛び込んだのか、「んんーげっげ」という音だけでTさんではないのか。どっちでもいいように書いてあるのだと思うのだけど、そのぼやかしていることにあまり意義を感じなかったというか。
 そもそも事故の話より、「Tさんが辞めてしまった」ことに対して、イヤな印象を受けてしまった。確かにTさんの咳は耳障りだったのだろうけど、「フロア中に微妙な雰囲気」が不愉快で。なので、事故のエピソードは霞んでしまった感もあった。

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January 11, 2008

てのひら怪談 感想その5

 ・自分のメモ用に、お気に入りに★印をつけてます。「良い」ではなく「好き」であることをご承知置きください。

浄霊中 我妻 俊樹
 秦さんという名前がなんかいい味だしているなあ。ハタじゃなくシンなのが、なかなか。(説明になってない)
 なんだか几帳面な感じの浄霊師(?)ですな、汚い格好なのに。ちゃんと一軒一軒「終了」の札つけたりして。(笑)

換気扇 小林修
 うへえ。結局は換気扇を止めるだけなんだろうけど、この話はこの家族の中で幾度も語られることになるんだろうなあ。我が家の伝説はもっぱら「忘れ物」に関するものばかりですが。遺骨忘れたりとかね。

住んでいる家で昔起きたこと 佐々木隆
 うーむ。ポルターガイスト現象を羅列しただけ、というふうに読んでしまった。心霊現象に興味があれば、面白いのかもしれないけども。

落ちていく 平金魚
 なげやりな感じなのに段々言ってることがすごいことになっていって怖いっす。その加速度がすばらしい。
 ただ私としては「ネタ」を小手先で細工したようにしか見えないなあ。

怪段 猫屋四季
 上に同じく、ネタの域を出ていないかなぁ。雰囲気が何もないので、ただ字面をその通り読んで終わってしまった。読み手の想像力はもちろん創造力も刺激してくれるようなものが好きなのです。
 そういえば、終わらない階段の話は私も書いたことがあるような気がするんだけど……なかったけ?あぁ記憶が(涙)

白壁 岡部えつ
 「怖い話」として期待を裏切らない内容と結末。女の姿が明確で、I君の髪を伸ばさない理由として筋が通ってるので、素直に読めた。
 ゆうべ、というのがニクイですね。聞いたばかりの話を早速語っているという設定が。「新鮮さ」というのが、怪談フリークにとってどれほど重要なのかはわからないけども。

日々のつみかさね 平金魚
 あっはっは。これはなかなか呑気で楽しいなぁ。
 しかし、おたくの息子が突然行っても見えないと思う。そもそも親が自由研究を楽に済まさせようとするってどうなの。しかも友達のパクらせてさ。

デッドヒート ヒモロギヒロシ ★
 やられた。2に収録されている「死霊の盆踊り」より、個人的には好みです。一連の感想で何度か既に書いているけども、匂いとか触り心地とかが感じられる作品に惹かれる傾向があるので、白粉の匂いの洗濯物というのは、堪らないものが。(笑)このドタバタ劇の結末が「白粉」という艶かしい余韻なのも、また非常によいのです。

テスト 黒田広一郎
 ってことは、ここからまた「事件」や「事故」が起こりうる、そういうワケですね・・・。
 「彼女」は恋人だよね、たぶん。この後、二人の関係がどうなったのかも、ちょっと気になる。彼女はこの怪異現象のみをテストしたかったわけじゃないのかもしれない。と深読みしてみたり。

流れ 登木夏実
 これはどこにポイントを置けばいいのか、ちょっと困った。「流れ」ていること自体か「四十五年以上」に注目すべきか、はたまた飲み屋で「偶然」聞いたことか。
 最後になって初めて主人公のおおよその年齢が判明して、そこでもう一度この話の設定を頭の中で整理しなくちゃならないのが、面倒だった。「流れ」には興味をそそられたけども「四十五年以上」には驚きも何もなかったので、それが話の〆だったことに馴染めなかったのかも。

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January 10, 2008

てのひら怪談 感想その4

 ・自分のメモ用に、お気に入りに★印をつけてます。「良い」ではなく「好き」であることをご承知置きください。


指切り 不狼児
 とりあえず……痛そうだな。
 オトコノコのそいつに対する心持ちというのは、なかなか想像が及ばないのだけども、なんだかとてつもない興
味と執着があるらしいというのは、子供のころに起きたとある事件(笑)で思い知ったですよ。
 ティッシュに包んで、というのが、結構衝撃。
 そしてナイフの話だけに終わらないところ、どちらのエピソードもタイトルとちゃんと関わりがあるところが技アリ。

げんまん グリーンドルフィン
 うわ、何を約束させられたんだろう。
ポケットの中の手は自分から出たものではないのに、子供の声は己の肉体から発せられた、というのが怖い。「子供」が自分のウチのものかソトのものかわからんということが。

腕相撲 木村小鳥
 手の形をしていなかった、というのが気色悪いなぁ。群れていない子のほうが強い、というのがなんかいいですね。

ご時世 松音戸子
 あっはっは。本当にご時世だ。
 「第三者に提供致しません」のあと、皆が恐がらなかったのもまたご時世。この台詞、決まり文句になり過ぎて、重みとか信用とかがなくなってるもの。

時計 米川京
 あ、これはイヤだ。個人的にはかなり怖さのツボつかれたかも。時間に追われるのが、非常に苦手なんですね。そこへ、時計の表示。もうパニック必至だよ、これ。

「怖い話」のメール 中島鉄也
 あぁ……。やっちゃった。
 なんというか、私の中にあった「怖い話」のイメージに近い読後感だった。小学生のころ、同級生と車座になって怖い話を聞いた時の気分を思い出す。

怪談サイトの怪 矢内りんご 
 いやー怪談サイトの怪談がみんな「本当の怪談」だったらたまりませんな。でも、もしかしたら、気が付かないだけで…なんちゃって。

よくある話 伊予 葉山
 パソコンのご機嫌(機械に機嫌というのはオカシイのだが)って確かに怪異現象じみているところがある。
 ビーケーワン怪談大賞に投稿した人はほとんどパソコンで怪談を入力してメールで送信したわけだから、ネット
発表時にはある種の臨場感もあっただろうな。

足切り女 綾倉 エリ
 これはショートショートの読み心地。でも、そこに怖い話特有の読後感がある。よくもわるくもお手本的な感じかな。
 それにしても1にはこれだけあった「怪談サイトもの」が2には見当たりませんね。私自身、怪談自体に興味があるわけではないので、「怪談サイト」は見たことがありません。というか、怪談サイトってものがあることを本書で気が付いたわけです。体験がないので「ふーん」という感じでしか読めないのがアレですが。

マユミ 梅原公彦
 「マユミ」も電話の主が見えてたり、声が聞こえてたりするんじゃないか?当人同士でやってくれよ、まったく。(笑)なぜ、電話を介さなくちゃいかんのだろう、電話なんか使わなくても、フツーの人間を通さなくてもよさそうなのに。この主人公に恨みがあるなら、また別だけども。

電話 杜地都
 これも「参ったなあ」と思った作品。これは現実に同じ性質の怖さを味わう可能性があるし、味わったことがある人もいるだろう。現実感と怪異の雰囲気が絶妙に混ざり合っていて、ほんとイヤ。(褒めてます)

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January 09, 2008

てのひら怪談 感想その3

 ・自分のメモ用に、お気に入りに★印をつけてます。「良い」ではなく「好き」であることをご承知置きください。

恩人 酒月茗
 「物事の順序を破ることにより起こる怪異」というのは、古臭かったり土着的なイメージが強いけれども、しっかりと現代の物語になっている。日本刀を譲り受ける人はほとんどいないだろうけども、小難しく面倒な手順を省いてしまった気分はわかりすぎるくらいによくわかる。
 大沢のキャラクターや私とのやりとりも、ほどほどに自然で面白く読んだ。

祖父のカセットテープ 黒史郎
 おっかねえのかわからない、と語り手は言っていますが、おっかねえでしょう、これは。(笑)
にしても、ずいぶんアクティブなババアだこと。

火傷 グリフィンドール
 う・・・。痛い・・・。過去に自分に起きた出来事を聞いてしまうわけですが、これは録音されていたというより(CDだし)、SFっぽく、ヘッドフォンを通じて過去と繋がっていると読みたい。

火傷と根付 矢内りんご
 おもしろがってるよ、この人…。作者さんのお望みどおり(?)怪談なんか書くもんじゃないな、と思ってしまった。

半券 痛田三
 松本清張の「砂の器」も映画も未見なのですが、それは関係なく面白く読めました。古本に、前の持ち主の気配が残っていることは確かにあることで、そーいう体験がある人は、グッとこの物語を身近に感じられるだろう。
 なぜ「砂の器」なんだろう、と思っていたら最後の詩。なるほど。

傘を拾った話 佐々木土下座衛門
 深読みしすぎだろうけども、次に事故に遭うのはこの語り手なんじゃないか、と思った。「面識のない人」とわざわざ言うところにひっかっかったわけだけど。

泣き石 六條靖子 ★
 抽出の中の箱庭空間にそそられます。息子はいくつなのかしらん。小学校3年生くらいだといいな。(何故)
 水音が咆哮になり、落として沈黙して。石の中では一体何が起きたんだろう。石の中の「何か」が死んでしまったように感じたのは、私だけだろうか。

淳くんの匣 君島慧是 ★
 君島さんはアート関係にお詳しいのだなあ。いいなあ。桑原弘明さんのスコープとかもお好きかしらん。
 匣の中の怪異と葬式はきっと直接のつながりはないのだよね。だけど、「つながりがあるように思わずにはいられない」人情、みたいのが感じられて面白い。
 そして、最後の冷蔵庫、これ「匣の中の冷蔵庫」と「現物の冷蔵庫」とをわざとごっちゃに書いてあるように思うんだけど(「ボールペンで……閉め」るのに「中のものが腐る」)そーいう異界との境界があやふやになるような感じがすごく好き。

木乃伊 暮木椎哉
 かくれんぼで、一人隠れているときの孤独が私は苦手だった。自分だけ忘れられて、ほかの子たちはもう別の遊びを始めているのではないか、とよく思ったものだ。隠れているときは、普段と違う時間の流れと心持になる。
しかも蔵の中。そして木乃伊。これは別に怪異現象が起きているわけじゃない。木乃伊だって睨まれたように感じただけ、だろうし。なのに、ちゃんと怖い。
 という感じで満足してしまったので、最後の一文はなくてもよかったかなあ。

出目金 興田募
 赤から黒になったことが一番ギョッとした。血の色、めでたい色の赤。悼む色、恐怖の色の黒。
拷問を受ける出目金を見る弟も、Nと同じく何がしかの快楽を感じていたのではないだろうか。黒い出目金も再び殺されることを望んだわけではないだろうけども。

煙猫 新熊昇
 新熊昇さんは、2でも猫のお話を書いておられますね。
 猫がなぜ幻想小説と相性がいいか。シルエットが絵になる、独りで行動する(その間の様子が人に見えない)、身体の柔らかさ、しなやかに色気を見出せる、等々の要素があると思うのだけど、今作は猫の姿形と煙をうまくからめてある。
 今は葬儀社に、という結末だけども、はてさてどちらが猫にはうれしいだろうか。煙猫が喜んでお気に入りの場所に走っていったとなると……。皮肉のある結末だ。

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January 08, 2008

てのひら怪談 感想その2

 ・自分のメモ用に、お気に入りに★印をつけてます。「良い」ではなく「好き」であることをご承知置きください。

ひどいところ 平金魚
 幸い、私は身内の死はまだ老人でしかしらないけれども、祖父や祖母が夢に出て来た日は、一日切ないような嬉しいような気分になる。
 この兄さんは、本当に優しすぎる。この主人公も優しすぎる。
 頭が良すぎるひとと優しすぎるひとは、どうも生き急いで見えるような気がするのは、私だけだろうか。

明け方に見た夢 樋口摩琴
 虫の知らせの明確バージョンと言った感じ。昨夏、祖母を亡くした時、私はその時刻ごろ腹痛を起こした。(笑)
 だから、あり得ないとは思わない。
 しかし、このような内容は、今まさに家族の死を迎えそうな人や迎えたばかりの人が読むと、つらいのではないだろうか。だから悪いというわけではないけども。

 雨川アメ ★
 これも初めて読んだ時に印象残った作品。
 兄とS子ちゃん、それぞれが自分の名前しか聞こえないというのもうまいけれど甘い匂いとベタベタした桃の汁が、お盆の季節やこの世を見ることなく逝った子供のイメージと結びつき、余韻が残った。

水遊び グリーンドルフィン
 どこで気付いてしまったのかが、もう少し明確であればよかったのだけども、湯灌を死人の立場で体験するとこんな感じ?というと乱暴か。

連れて行くわ 雨川 アメ
 これは早々に結末がわかってしまった。
 しかし、継母を先に殺さなかった母親の心情が今一つわからない。冥土でも娘を手元に置くほうが安心、ということか。ああ、継母と同じ世界に暮らすのが嫌だったんだな。

墓参り 高橋史絵
 迷宮入り……。死んだ者に尋ねることはできない。
 といいつつ。なぜ勘当したのが女親なんだろう、と若干ひっかかりを覚えながら読みすすめたのだが、結末から「ひそかに連絡を取り合っていた母と息子」と読むこともできる。
 でも、そう考えてみてもなんとなくザラザラした読後だ。

おかえり 峯野嵐
 年寄りと音、というのは確かに強い結びつきがあるかもしれない。咳払いだったり足音だったり。
 そんなところに上手く着目、というかどの程度実話なのかわからないけども、作者さん自身の経験が含まれているのだろうと思わせる、鮮やかで確信のあるおばあちゃまの描写でした。

世話 杜地都
 冒頭の「蛙の声」のおかげで「それ、」を蛙的ビジュアルで想像してしまったのだけど、これは作者の仕掛けだろうか。(笑)
 こういう引き継ぐ系のモノは、なぜだか女のほうが濃い気がする。糠床とか(?)。この国で男子を後継と見なすのは、女は放っておいても色々引き継ぐからかもしれんな。なんて思ってみたり。

のほうさん 朱雀門出
 これも印象が強かった作品。
 またまた個人的な話だが、父の実家には私が子供のころまでお手伝いさんがいて「なんぜさん」と呼んでいた。写真で見たことないことや今一つ素性がわからない感じを思い出して、すごくシンパシーを抱いてしまったんである。
 ちなみに、ちゃんと家族の話題にはのぼりますが、亡くなったのかどうか、はっきり知らないんだ、実は。

生き血 田辺青蛙
 内容的には、オーソドックス。末代まで祟られちゃってますな。
 田辺さんの作品は、描写が明確というかシャープな感じがして、そこに個性が現れていると思う。文体とか出てくるモチーフとかに個性が出ていると感じることが多いのだけど、田辺青蛙のはちょっと違うように思う。

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January 07, 2008

てのひら怪談 感想その1

 というわけで、週刊てのひら怪談の感想は秋山くんにされてしまったので(?)、「てのひら怪談」の感想を書いてみようと思い立ってしまった。しまった。「webベースでの地道な宣伝活動のつもり」と自分を励まします。はい。
 「てのひら怪談2」と同じく、ぬるめでいきますが、2の時と違い「どう怖かったか」という観点はほとんど意識せずに読んでいるので、ちょっと雰囲気変わっているかもしれません。


歌舞伎 我妻 俊樹
 二度三度と展開があって、引き込まれた。錆びた電池でしか鳴らないラジオ、というのは非常にコドモ心をくすぐるなあ。わくわく。
 ロシア語の放送が歌舞伎の台詞のよう、というのが結びつかなくて苛苛としたら、それ自体が結末なので読後感が非常に強く残った。

 夢乃 鳥子
 若干、文体が作り込みすぎのきらいがあるけども、この辺は好みですね。
 女の微笑みはモナ・リザを思わせて巧い。最後の一文が、この怪異が終わらないことの暗示にも読めるし、長い影が視覚的に妖しくて素敵。

軍馬の帰還 勝山 海百合
 なぜだかちょっと読みにくくて、二度三度読み返した。内容がわからなかったのではなく、状況がわからなかったわけでもなく、一人称として読んでいなかったようだ。なんでだろ。
 それはさておき、グッとくる話だ。戦に出るものへの想いは人へも馬へも関係ない。それにしても馬は人間と関わりが深い動物ではあるが、戦との関わりがもっとも強い動物であることよ。なんだか人間のエゴを感じます。サラブレッドの人工的な美しさもまた。

夏の夜 田辺 青蛙
 そういう祖母自身ももはや「昔の女」だなあ。(笑)
 鯉と少女のビジュアルが非常にカラフルで耽美で素敵なのだけども、ストーリーとの必然性はあんまり見出せなかった。若かった祖父と生前の少女(と鯉)に起きた物語を想像させるには、ちと描写が足りないように思う。

ムグッチョの唄 江崎 来人
 無駄な描写がなく、きっちりと展開していて巧いなあ。「ムグッチョ」という音と、身体中に水草が捲きついた男の姿が実にピッタリ。

吉田爺 立花腑楽
 1を読んだのは、拙作が2に載ると決まってからだったのだけど、これを読んだときには参ったなあ、と思った。(笑)こーいう実話にも創作にも読める筆力と怖さを求められていたのか?!と。どう考えても敵いません。
 立花腑楽の作品としては、2の「夏の終わりに」のより幻想的な話のほうが好みなんだけれども。

光の穴 野々宮 夜猿
 これはさらに実話っぽさが強い作品。一人で出て行ったことは、仲間も覚えていることだから事実だろうけども、その間の出来事はすべてあやふや。最後の一文は実話ならアリだけど創作なら蛇足かも。

階段 白 ひびき
 あはは。「地に足がついてない」お父さんは正しかったわけですな。(笑)
 「ニュルンという感触」が味わいたい~。ちょっと空気の階段を探してみようかしらん。

猫である 不狼児
 うーん。不狼児め。と初読で思いました。(笑)最後の段落だけでも超短編的には成立しそうだな、てことも思いました。
 漱石を思わせる旧かな遣いが映えている。「月の光」「蛭」「鏡」「竹藪」と、濃い目のガジェットが連続するけども、胸焼けせずに読めたのは、一連の流れに無理がないからだろう。ごちそうさまでした。

薫糖 田辺 青蛙
 くんとう、と読むのだろうか、話を読み終えてこのタイトルを見たとき、嗚呼と思った。「薫陶」という言葉はもちろん、源氏物語の薫もちゃんと掛かっているんですね。あっぱれ。
 この終りの見えない復習の儀式は、いづれ祭事の類に習慣化しそうな予感。恨みもさることながら、人の営みにも思いを馳せることとなった。

ガス室 クジラマク
 クジラマクさんは2に収録の「赤き丸」でもモニターに写る映像を使っているけども、今作は「赤き丸」よりももっと凄惨でリアル。けれどもどこかユーモラスな味わいがあるのは、この人ならではだな。
 しかし、笑ってばかりはいられない。Sさんの冷静さというか、慣れてしまった感を思うとどうだろう。


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December 21, 2007

てのひら怪談2 感想その10

但し書き
 ・このブログはhyo-tanこと五十嵐彪太の絵本中心レビューブログ兼読書記録置き場です。
 五十嵐の創作関連個人サイトは別にあります。

 ・自分のメモ用に、お気に入りに★印をつけてます。「良い」ではなく「好き」であることをご承知置きください。

怪鳥 湯菜岸時也
 す、すごいタイトルだ。たぶんチビってますね、この人。(笑)なんかえらい笑った。
 雨が怪異を運んできたってことだろうけども、幻想的な怪異ではない。チンピラが現れて、いなくなっていただけ。主人公も怪異なんだかどうなんだかすらわからない、っていう感じがほかの作品とは違っておもしろいと思った。
 大学の考古学の先生が「朱雀は『キエエエエ~』と鳴いて」と言っていたのを、なぜだか思い出した。

ハンター 峯野嵐
 なんか、マザコン。(笑)でも「母の言葉」の効力とか威力とか、そういうのがよく出ていると思う。「お母さんの言ってたワケわからないこと、ホントだった、なんでだろ?」みたいな。この本の中には、そーいうお母さんパワーの強い母がいっぱい出てきて、すごいです。わが愚母は、このようなお母さんパワーをあまり持っていない人なので、なんかうらやましいような、そうでないような。
 駅の様子、蛙の鳴き声、おばあさんの登場、いい具合に馴染んでいる。でもタイトルだけは、あまり馴染んでないような。いくらすばやい舌で獲物を捕らえるといっても、ひょこひょこ歩く着物のおばあさんに、ねえ。

魅惑の芳香 大河原ちさと ★
 最後の一文で、いきなりシュールになった。ピタッと止まるけど、その空気がずっと続く感じ。こーいうの好きだ。
 ところどころ、表現に過不足があるように思った。たとえば「嗅覚と視覚以外の感覚が麻痺……」の一文は余計だろう。こういう直截な説明をせず、その感覚を読者に体感させてほしい。
 ドリアンだのくさやだのシュールストレミング的なものを(残念ながらどれも食べたことないけど)想像するけど、こいつは動くんだよね。すごいね。生きたまま食べたくなる匂いを発するそいつ。虫も鳥も犬も人も、食べたくなる匂いを発するそいつ。楽しいわ。

アイス墓地 松音戸子
 前半のアイス墓地の描写が、いかにもその後の怪異のための説明って感じがしてしまって、いまひとつ入り込めなかった。とくに『花子の墓』とか書いてあるのは「墓っぽさ」を強調するだけで、その後の歯の怪異とあんまり関係ないし、わざとらしいかな、と。
 とはいえ、アイスと歯を絡めたのは、うまい。歯がぼろぼろ抜ける感覚は恐ろしいし(よく夢で見る)そんな子供たちが集まる待合室も異様だ。アイス墓地と歯医者になんらかの因果がほのめかされていれば、なおよかったかも。

スコヴィル幻想 斜斤
 すこぶると掛けてあるのかな。だじゃれラヴ。(?)
 辛(から)いのが苦手な私としては、これは辛(つら)い。うぁうぁ言いながら読みました。マッチ棒の頭はなくなったのにまだ辛いものがあると。意味わからない。勘弁して欲しい。辛いのいやー。(褒めてます)
 しかし、マッチ棒の頭より、馬面の男に、出ていってほしいよ。

ギジ 一双
 股間、気になってました。すみません。(笑)しかし子孫が現代にいるんなら無事だったんですね、股間。
 たぶん差し込み式の義耳(詳しくは知らないが、現実の義耳はそうではないと思う)。それを挿入する穴がどんなふうか想像してみると、なかなかエロチックである。耳の中の機能はたぶん生きていて聴力も残っているのだろう。失ったのは耳という物体であり、身体の部位としての耳ではない。ってのもまた、なかなかよい。
 家が寺かどうかと言うとちょいと疑問だ。阿弥陀寺に住んではいたけど、芳一は琵琶法師であって坊さんではないからなぁ。まぁ、無粋なツッコミはこれくらいにして、ギジというカタカナのタイトルはとてもよい。擬似とか疑似とも掛かっているし、タイトルだけでは、内容がわからないというのも、よい仕掛けだ。

分割払い 杜地都
 なんともイヤな感じだ。痛みが分割されれは、確かに強い痛みによるのたうち回るような苦痛はないだろう。だが痛みは痛み。小さく長く続く痛みもまた辛く不安だと思うのだが。
 なのに、この主人公はそれを歓迎しているらしい。しかも、なんとなく図々しい態度だ。この態度は一体どうい
う心理から起こるものだろうか。それがまったくわからないから、ひどく不愉快だ。(褒めてます)
 日本舞踊だのお母さんに見られなくてよかっただの、痛みとは関係ないどうでもいい話がペラペラと出てくるのも、鮎原くんの図々しい態度やちょっと変人な感じに拍車をかけている。なかなか真似できない。
 たぶんこの診察室は整形外科ではない。

肝だめし 不狼児
 女の匂いと線香の香りと煙が混ざった日には、どこかに連れて行かれて当然でしょう。意外に年増の女、というのも凄みが増して、この話に相応しいと思う。
 実は私はこの話を読んで、精通を連想したのだが、妄想が過ぎますかね。
 
よそゆき 飛雄
 うわぁ、嫌な話だ。場所がプールである理由がわからなかったのだけど、位置的に遠そうなのに縫い目なんかがよく見えるのも、ちょっと気になったのだけど、まあ、それはどうでもいいや。
 同性だからこその嫌悪というのは、なかなかしぶとい。服を裏返して着て踊る女。その服が母の「よそゆき」とは。おばさんと母親は違う人物だけれども、そのよそゆきの所有者で着用者である母親に汚らわしさを感じることは、不自然ではない。嫌悪感が延々と出てくるのがわかる。そんな妹の様子を見ていた主人公はどんな気持ちだっただろう。
 若干、最初の妹の年齢の設定が低すぎるような気もするけども。

死霊の盆踊り ヒモロギヒロシ
 「共に踊ろう」で一笑い、「陽気を人為的に」で二笑い、「ゆかいなダンス」で三笑い、「アニソン」で四笑い、「ジャガイモが芽吹く」で五笑い、「ジェンカを小一時間」で六笑い、「数的不均衡」で七笑い。
 最初は馬鹿にしていた主人公がだんだんとマジになってしまうところが見事に描かれている。こーいうことは現実にあり得る。

おわりに。
 長々と独りごとのような感想にお付き合い、本当にありがとうございました。

 怪談というものについて、なんにも考えないままビーケーワン怪談大賞に投稿して、本に載ることになって、本になって、読んで。ここでようやく初めて怪談を意識することになった。以前、仕方なく(つまり学校の課題として)読んだ小泉八雲の「怪談」の記憶は遠く彼方の塵でしかないもんで。(ダメじゃん)
 なので、半ば無理やり「怖いって何だろ、これはどこが怖いんだろ」と思いながら読むことにしました。
そんな視線で読んでみて感じたことをちょっと言葉にしてみる作業、それがこのブログでやりたかったことです。

 そんなわけで、ごく主観的な感想にあえて撤してみました。また、文章や、話の構造や矛盾に対するのツッコミはなるべく抑えたつもりです。そーいうのは、得意な人に任せましょう。誰とはいわないが(笑)

閑話休題。
 「怪談は怖くなければいかん」とは最初から思っていなくて。でも、どんな話にもきっとなんらかの怖さは含まれていると思う。含まれた怖さに気が付くか気が付かないかは、その人の苦手なものの性質や、読むときの気分・状況、経験等々によって、違うんだろう。
 そもそも「怖さ」というのは単独で起こるのは稀で、他のあらゆる感情に小判ザメのように引っ付いていて、見えにくいときもある。逆に小判ザメのほうが目立って見えることめある。
 創作怪談を書くときには、小判ザメがいる、どんな姿の小判ザメかってことは意識したほうがよいけれど、小判ザメだけに気をとられていたらうまくゆかないだろうな。
 読む時には、小判ザメの存在に気が付かなければ気が付かなかったでイイんじゃないか。そんなふうに感じています。
……で、小判ザメって喩えはどうなのよ?

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December 20, 2007

てのひら怪談2 感想その9

但し書き
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てのひら怪談2レビューリスト 追加版
 秋山真琴さん
 酒月茗さん
 松本楽志さん
 根多加良さん
 峯岸さん
 マンジュさん
 間倉巳堂さん
 添田健一さん(全作じゃないよ)
 「てのひら怪談2」感想用ブログ

かまいたちはみた 野棘かな ★
 おお。講談調というか、テンポのよい文章。声に出して読んでもよいけれど、普通に黙読してもうっとおしさがないのがすごいと思う。それに、そんな文章なのに、なんともトボけた味わい。こーいう文章にすると、どうもチカラ入りすぎ、ってことも多いのに、ゆるい感じが出ているのがすごいなー。(感心)すごいばっかりでごめん。
 かまいたちが「重い」と言ってると、やけに説得力があるな。(笑)
 
押入れ 青木美土里
 このお姉さん、たぶんあまり賢くない。たぶんあまり綺麗な人ではない。「彼」といってもその彼がお姉さんを恋人と認識しているとは思えない。そーいうことが、少ない情報できっちり伝わってくる。なかなか真似の出来ない書き方だ。
 そんなお姉さんに対して、この主人公はなんらかのエロティックな感情や衝動を持っていたのではないか。(主人公が男か女かは、あんまり関係ないと思う) 押入れの中の布団には、お姉さんの匂いがまだ残っていたのかもしれない。

からくり 圓眞美
 M氏の容姿や意味ありげな態度は、ちと予定調和過ぎるか。
 主人公が自分の容姿に自信ありそうなのがオモシロイな。
 それにしても、「からくり」とはよいタイトルをつけたものだ。こっそり玄関から庭へ回る主人公の動線、暗い穴から出て繰り返し動く足、何度も背中を踏みつけられる男の姿、まったくもって玩具的だ。

豆腐屋の女房 皿洗一
 真っ先に思ったこと。「勿体ない」。
 どうして古くなった女房を、通りから見えるように捨てるのだろうか。憚る気持ちはないの?新鮮な女房に入れ替わるのを見せびらかしたいのか?女房を作る技を自慢したいのか?
 どちらにせよ、三日に一度新しい女房を作る時点で正気の沙汰じゃあない。よっぽどの執着だ。
 …ここの豆腐、売れてるんだろか。私は買わないぞ。
 と色々書いてみたけれど、これは老人の話を信じる場合。語り手も老人も、なんだか胡散臭いんだもの。むしろこの作品のキモは、二人のわざとらしさではないか。

空気女 黒猫銀次
 「空気女の中のほうがだいぶ清涼感に富んでいて」が可笑しい。女というものにたいする男性の幻想が、ここかしこに見える。私が空気女を想像したら、ムンムンしていてとても清涼感がありそうに思えないもの。まあ、「空気男」でも同じだけども。(笑)
 そんな感じで、空気女を異性として扱っている主人公が、なかなか胸キュンです。(そうか?) 空気のような存在とはいえ「女の中」にいるのってどんな気分だろう、とか考えてみたり。

移り香 沙木とも子
 私事な余談です。先日、夢を友人に送信してしまったのが判明した。私は友人に問いかける夢を見て、友人は私に呼応する夢を見ていた。状況も光景もまったく同じ。夢見は慎重に。(無理) 特にエロい夢に知人友人を登場させないようにしないとなぁ。(笑)そんなわけで、この話がやたらリアルに迫ってきてしまった。
 本題に戻りましょう。死んだ後も変わらず語り続ける一人称というのは抵抗があるのだけど、この作においては効果的。客観的で冷静な語り口が、それを支えてるんじゃないかと思った。
 雑巾と一緒に洗ったバスローブに、なお残る香水。浮気相手の女性の執着も垣間見れて、怖い。

姑のハンドバッグ 六條靖子
 うわぁ。女の怪って感じだ。離婚後の後引っ越し整理で、夫ではなく姑が問題になるとこが、なんとも苦々しい気分。
 主人公と智香の「連帯感」が、端から見て行き過ぎだ。それを強調するためだろうか、たぶん意図的に夫の気配を一切消して書いてある。姑と妻の板挟みだったであろう夫だった男。もう忘れられてるよ。ちょっと気の毒。

本日のみ限定品 石居椎
 うまい。子供の頃の思い出と光景が、後でつながってくる。そして、私ならつなげることに精一杯でおざなりになりそうな、風やひぐらしの様子が丁寧に描いてあるのがさらにうまい。
 途中で缶詰めの中身は想像出来てしまったが、単に幽霊として出現するのではなく、母の味として現れるのがこの作品の素敵なところだし(缶詰であることにもつながる)、この現れ方はとても「母親」的だ。
 例えば七月二十六日が祥月命日であるとかって明言すると……くどいな。日にちは意味がありそうで謎なままでよさそうだ。

トキウドン あか
 ずっと「です、ます」調だったのに、最後だけ「無かった。」作者さんのしたたかな思惑が見えてグッド。(笑)
 「八文」なら八まで数える前に「今何時だ」をやらなきゃだめじゃん!甘いよ喜多さん。
 で、八つが丑三つ時だから、ここは「八文」じゃなきゃいけなかったんだな。(わけがわからない人は古語辞典で時刻と方位の干支表を見ませう。)うどん一人前八文って時点で丑三つ時だと先読みして、ニヤニヤ読み進めるのが粋な楽しみ方だったな、ちくしょー。

黒い不吉なもの 乃木ばにら
 やっぱり夫はあやしい。黒い不吉なもの、なんてあまりにも言い訳っぽいもの。怪異としての不吉なものと、夫に対する疑念としての不吉なものが掛かっていて、もやもやとしてしまう読後だ。
 ただ、テロという現実にありうる不穏な題材は、あんまり好みじゃない。ほんとに好みだけの話だけど。

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December 19, 2007

てのひら怪談2 感想その8

但し書き
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父、悩む 吉野あや
 「濡れた窓を吹くワイパーの音がする。」が泣かせるねぇ。
 ダンナの顔をした700系、瞬きするのかな。でもライトも光らないし、ワイパーもないし、走ることはできないだろうね。新幹線として役に立たない700系のほうが、新幹線の顔をした父よりある意味気の毒かもしれない。

なめり、なめり、 有坂十緒子
 これは本当に不思議な心持ちになった。まず、死んだ友人に恨まれていたと知ったら、なんてことを私は自分のこととして想像できない。おかしくなってしまうかもしれないし、案外ケロリとしているかもしれない。
 主人公は、恨まれたのに、おまけに姿は大嫌いななめくじなのに、友人の化身にいとおしさを感じているらしい。納得するようなしないような。(笑)
  つまるところ「憎みきれないんだよなー」という雰囲気が、何度も伝わってきて、結局ちょっとほんわかしてしまったのだった。

乗り物ギライ 麻見和臣
  これもショートショートの読後感。「あぁ、そうか。困ったねぇ。」と。生前からうっとおしい人だったろうなあ。
三途の川は泳いでは渡れんのか。
 短くテンポのいい語り口。小咄というか、耳で聞くともっと面白いんじゃないかという予感がする。

橋を渡る 峯岸可弥
 500文字の心臓の管理人。
 なんで読点がないんだ?三箇所くらい、読み間違えたんだが。
 「異形化させてゆき」に異議有。「○○化+させる」が日本語として馴染まない。それは私の感覚だから置いておいて。想像した異形から、獅子の姿は遠かったので、一瞬置いてきぼりをくらった。獅子に至る描写がもう少しあったほうがよかったなあ。
鼻がどうにかなるんだろうと身構えていたら、裏切られた。ちくしょう。

僕の妹 室津圭
 病気のある兄弟のために寂しい想いをしている子供たちは、現実にたくさんいる。お互いに貶し合いながら、それぞれ気にかけて心配しているだろう。兄妹の気持ちや、絆が見事に表現されていると思う。
 さまざまな描写が、子供の視線そのもので、非常に丁寧に書かれていると感じた。

古井戸 勝山海百合
 こちらも病気の弟が、兄姉に後ろめたさを感じているのが切ない。
 最後の一文は、若干あざとい感じがしなくもないなぁ。演出過剰というか。個人的には「甘かった」で終わったほうが、余韻に浸れた気がする。

千住が原からの眺め 保志成晴
 くらくらする。魅入られるというのは、こういうことを言うのだな。
 これは私の勝手な解釈だけれども、思春期にままある一過性の同性愛的感情を義男は健次に対して持っていたんじゃないかなぁ。健次は義男たちに意地悪されていたようだけれども、皆と違う気配や雰囲気を健次は纏っていたのではないだろうか。だから、憧れや畏れの裏返しとしての意地悪。
 健次を死なせ美しい死顔を見て、普通なら成長とともに薄らいでいく同性愛的感情が、義男に強く残って離れなくなってしまった、という妄想を存分にした。

筒穴 貝原
 どういうわけか、私は石の地下通路とか地下水路とか地下都市(の遺跡)にやたら興奮するタチでして。カッパドキアやらカナートに萌える。(笑)そんな感じで、ワクワクしてしまいました。どうしましょう?

 登木夏実
 おぉ。ショートショートの読後感を持つ作品はこれまでにもいくつかあったけれど、これはチト毛色が違った。もう一度読みたくなる、のである。
 女性と蛇の面影を重ねて読み直したい。お父さんの腕時計を壊してビクビクした気持ちを想いながら読み直したい。……技あり、です。

隙間 宇藤蛍子
 えー!えー?(笑)呑気なフリして、冷酷なことを。しかも力持ち過ぎる。タンス。持ち上げたのか?この主人公、大物だ。
 「テレビ」とか「コーヒーゼリー」とか、些細なものが全体の雰囲気を作っている。すごいです。

独り言な感想にお付き合いいただき、ありがとうございます。
あと二回の更新で100作終了予定です。全部書けるかなあ、長いなあ、と思っていたけれど
なんだか淋しいような気もしてくるから不思議。

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December 18, 2007

てのひら怪談2 感想その7

但し書き
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鳥雲 黒田広一郎
 カラスの化け物を思わせる鳥雲が怖かった。この本の中でも既になんどか鳥が出てきているけど、鳥自体が怖いのは初めてだ。
 そして米沢くんの言葉。自分の黒い気持ちを見透かされた上、冷静に指摘されたら、それはそれは動揺するだろう。「氷で胸を一突き」、あまりにも的確な表現に、こちらも胸を突かれたかのようにぐさりときた。

帰り道にて 椎名春介
 いやーな感じ。(褒めてます)
 全く知らぬ通りすがりの人に後ろ指さされたことがあれば、あの恐怖と晴らしようのない恨みを思い起こすことになるはず。奇異なものを見る視線を、誰かに投げ掛けていないか、わたしはいつもびくびくしている。

問題教師 貫井輝
 あはは。どんなお守りでもいいんだろか。タトゥーなんかででいいの?そこは指示しないの?
 もっともこの先生の言うことは、信用しないほうが良さそうだ。「祓うとかゆって呼んでんの。」だもの。

せがきさん 仲町六絵
 ご存命の先生に会うと未だに「ちゅ、ちゅ、」してるのがわかっちゃったりするんだろうか。いやだいやだ。
 学校モノの中で、印象の強い作品だった。子供のころにあのテの遊びをしたことがあれば、あの感覚を思い出しながら読むことができる。

アキバ 亀ヶ岡重明
 内容自体は面白かったのだけども、なぜアキバなんだろうか。秋葉原や秋葉原的な何かが暗示されているわけでもないようだし、インパクトはあるけどもそれ以外の効果があったようにも思えず、何だか勿体ないような気もするなあ。

壁の手 加上鈴子
 「以後も時々」のくだりはなくてもよいかなー、「壁から感じる」だけで締めてもいいかも。内容がというより、ここだけ文体がちょっと違うように感じたから。
 声を掛けてくれた子を誉めてやりたいな。自分を受け入れてもらうより、相手を受け入れよう、と思うようになったのは幾つの頃だったか。

写生 武田忠士
 ふぅ、子供たちに何事も起こらなかったようで一安心。でも、黒い塊を子供たちが見た、というだけではインパクトが薄いかなあ。子供たちには見えていたけども、大人は気づかなかった、というふうに勝手に読んだのだけど、それを知った大人の緊張感とかギョッとした感情を意図的に出してあれば、もっとよかったかも。

酒場にて 野暮粋平
 これは、よく練られた嫌な話。巧いし、なるほどと思ったし、ゾッとした。
 けども、怖さの原因のほとんどは、裏に見え隠れする子殺しという「出来事」だった。子供の絵の内容とか、友人の胸中とかではなく。殺人そのものだけで怖さを出すのは、あまり好きじゃないな。新聞記事で殺人事件を読んだ時と似た感情しか沸き上がらないから。

角打ちでのこと 日野光里
 労働者が集まる角打ち。胡散臭い酒。
男臭いく、俗っぽい作品。ただ、もっと汚くていいんじゃないか。機械油の匂いやゴツゴツした男たちの手が見えてきそうな域には達してない。角打ちの説明も男たちの会話も、なんとなくイイ子ちゃん。作者さんと、作品内の登場人物の「育ちの違い」を感じてしまった。

マムシ 呪淋陀
 うー(涙)なんだこの怖さは。
 マムシより、うじゃうじゃのビンの蟲より、おじいさんが怖い。捕獲の喜びや満足だけでなく、尋常じゃない快楽を感じていそうなところが。

追伸。金曜日の吸血鬼イヴェントに参ります。てのひら作家さん、サインください。(笑)

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December 16, 2007

てのひら怪談2 感想その6

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グラマンの怪 うどうかおる
 「きれいなお兄さん」のところでぞくっとした。ぞくっとする自分にぞっとした。映画や絵画の中に作り上げられた美しい光景を見るかのように、この話を読んではならぬ。
 ちなみにグラマンは戦闘機(の代名詞)ですな。たしか作った会社の名前。
 「あのときがうそならば、」というくだりにはドキリとした。私も理由あって自分が生きていることに懐疑的だ。それについて10代のころ、「もしかしたらこの感覚は戦争経験者と似ている部分があるかもしれない」と考えたことがあって、それがあながち間違っていないことに、気づいてしまったのだ。

カツジ君 粟根のりこ
 サイパンかあ、と呟いてしまいました。にしても、南の島で戦死していたことは知ってて、じいさんの名前は知らなかったのかな。あ、お父さんの話で両方知ったのかな。まあいいや。
 寛さん、よく得心したな。でもはやく教えてあげてたほうがよかったんじゃないか?

町俤 酒月茗
 パナマ帽の老人の声が聞こえてくるようだった。これだけ少ない言葉で、それができるのがすごい。
 これを読んで、自分自身にあまり「町」への思い入れがないことに気が付いた。もちろん歴史や風情のある町並は、ぜひ保ってほしいと思うのだけど、私のそれはソトからの視線だ。私が暮らしている土地は雑木林が多かったところなので、新しい造成で林が減り人口の光が増えるとがっかりするのだけど、その感傷とはたぶん違う性質のものだ。

使命 水棲モスマン
 「お守りを配るような気持ち」というのが焦燥感を煽る。看板に現れた予言がどんなものかは、この足りない頭ではちょっと思いつかないのだけど(誰か種明かしプリーズ)、最後の一文から主人公がガッカリしたのがうかがえる

風呂 駒沢直
 おおっぴらに言えないのだけれど、あんまり好きじゃないんだ、でずにー。ネズミやアヒルのイラストやアニメは、いいんです、二次元のは。(あ、でも古い絵のほうが好き。)テーマパークで踊ってるやつ。怖い。偽善的で、アクションがオーバーで、変にヒーロー染みていて。照れたふりとかしてるけど、媚売ってるだけだろ。
 そんな私の中のネズミに対する疑惑の眼差しが、こんなに端的に現れた文章は、たぶん後にも先にもこれだけだろう。わが意を得たり。ありがとう。
 ちなみに子供のころ好きだったディズニーキャラクターは「ピノキオ」に出てくるジミニー・クリケットだ。

 別水軒
 小さなのころに怖くてリアルな夢を見たことがある人はいるだろうけれど、それを大人、しかも両親が同じ夢を見たというならば、これ以上の恐怖はないだろう。小さな身体が恐怖でいっぱいになるN君と、思わぬ危機に晒された両親の不安が切実だ。非常に面白く読んだ。

踏み板 井上優
 怖い音がしていたのが、しなくなって安心、という話かと思いきや。結局、はじめの怖い状況で落ち着いているところが、へん。それでいいの?処分するのは踏み板ではないの?
 でもこーいうのってありそうな気がする。慣れというのか、馴らされたというか。

狐がいる井下尚紀
 素朴に実感がこもっている語り口がよいです。
 子供のころ、夜中に小人の魔女と戦ったのを思い出した。手で何度も叩き潰すのに、イヒイヒと起き上がるエスニックな格好をした魔女とそのシモベたち。
 「あれはなんだったのだろうか。」本当にそんな感じ。すごく共感した。

ディアマント 小栗四海
 こ、これ実話?なの。有名な写真家の名前から始まる話に、ドキドキしながら読んでドキドキしたまま終わりました。
 しかも怪談でSF。目からウロコでした。すごい~~。(興奮)
 にしても、いやなもんだね、戦争は。いくら幽霊でも、自分がまだ生きてる時代に出るのは大変だったと思うのよ。

シミュラクラ 林不木
 タイトルが気になりますねー。(笑)類像現象。達観しながら、しれっと嫌味を言いそうな女の子の雰囲気がよく出ている。
 若者の様子がとてもリアルで読みやすく、それに流されてしまいそうだけども、よく練られた話だと思った。

怖いビデオ 崩木十弐
 静かに悲しい話。「怖いビデオ」というタイトルは素直すぎるかと思いきや、これ以上ないタイトルだった。
 ただ、個人的には人が死にすぎているような気がする。800字の中でこれだけ死なれると、「死」が単なるガジェットのように見えてくる。

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December 15, 2007

てのひら怪談2 感想その5

但し書き
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仮通夜 吉田匣
 お婆ちゃん、呑気に孫の肩叩いてていいのかね。蒼白い人たちはあなたを迎えにきたんじゃ。(笑)子供をからかう年寄りって、なんか好きだなぁ。
 ごくごく簡単な感想ですが、それはつまり、すんなりと読み楽しんだ、ということです。

通夜 吉田悠軋
 あぁ、なんかひどく悲しいな。猫の唸るような音、って書いてあるけども、主人公は一体いくつなんだろう。
 ごくごく簡単な感想(以下略)

大好きな彼女と一心同体になる方法 梅原公彦
 うわー、最悪な男だね。「クラスの嫌われ者」とか自分で卑下してるあたりが、キャラクターを端的に表していて巧い。

いのち 漆原正貴
 なんとなく違和感の残る読後感であった。うーんと、なんて言っていいのやら。死や命を美化してるようにも、慰みものとか愛玩物(主人公はそれをぬいぐるみのように抱いて眠るのだ)にしているようにも読めるから。
 魂(のようなもの)を所有しようとする欲望は、前作「大好きな彼女と――」と共通する。あちらは性的欲望の転化であると解釈できるし、コミカルなタッチだから気にならなかったのだけども、こちらは「魂(のようなもの)より自分が上」に見ている感じがして。
 ああ、上手く説明できない。ごめん。つまり、「丸くて蒼くて……」のカタマリと、対等な関係で向き合うべきなんじゃないか、と思っているらしいです、私は。

弔夜 秋山真琴 
 「やあ、狐。闇沼か、」のあたりがとても好き。
 「闇沼」と繰り返される度に闇が深くなっていく体感。それがお神酒によって崩れた時の驚きと、闇沼の「ほんとう」の姿へのいとしさを増幅した。

散歩にうってつけの夕べ 散葉
 落ちていた二千円は「招待状」だったのかしらん、と思うとちょっと素敵。
 体言止めが連続するのはたぶん意図的なので、このリズムに乗ってしまうのが吉。
 「こんな祭りを楽しんじゃったよ、どうしよう」と後悔しているであろう主人公のゾッとした心持がこちらにも伝わってくる。

影を求めて 山村幽星
 「欠端町」というのがなかなか洒落ていて、その後の展開を暗示する言葉になっている。
 想いが先行していて物語性が薄いので、読みにくさもあるのだけれど、影の使い方が巧いなあ。ノスタルジックな情景や気分を存分に演出していると思う。
 で。たぶん泉鏡花を踏まえてますね。

不思議なこと 神森繁
 巧いですねー。たぶん下手だと「それがどうした」になり兼ねない内容なのだけれども、いい具合に主人公の混乱と、おばあちゃまのユーモアや人柄が出ていて、私も素直に「アレレ???」を楽しむことが出来た。
 ××山に適当でよいから名前を付けてくれたら、なおよろし。

狐火を追うもの 五十嵐彪太
 えー。拙作です。読んでくださったあなた、ありがとうございます。
 広重の「名所江戸百景」の「王子装束ゑの木大晦日」を執筆の数日前に美術館で見まして、っぽっぽっぽっぽとたくさん狐火を出したいなあ、と。(単純)
 少年を描くのは好きでよく書くのですが、少年をした経験がないので、少年だった人に少年心理がよく出ていると感想をもらって、心底ホッとします。(連呼好き)
 結末から破瓜を連想した想像力豊かなお方がいるやもしれぬ。間違ってません。存分に妄想してください。

夏の終わりに 立花腑楽 ★
 好き度は、本書の中でベスト3に入る。「また来年な」が渋い。カッコイイ。(笑)
 自転車というのも、実によい。夏だ。
 私は五感を刺激してくれる作品が好きなのだけれども、これは音や匂いや、咽喉の渇き、汗の流れる感触が実にリアルに体感できます。好きすぎて感想がうまく書けません。


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December 13, 2007

てのひら怪談2 感想その4

但し書き
 ・えー、このブログはhyo-tanこと五十嵐彪太の絵本中心レビューブログ兼読書記録置き場です。
 五十嵐の創作関連個人サイトは別にあります。

 ・自分のメモ用に、お気に入りに★印をつけてます。「良い」ではなく「好き」であることをご承知置きください。

 ・明日金曜日はたぶん更新できないです。一応予告してみる。土曜日曜も怪しい。しばしお待ちくだされ。

鬼女の啼く夜 池田和尋
 鬼「女」が乗り移って(と断言していいのかちょっと心配だけども)「男」の欲情が奮い立つのが、セクシャリティーの錯綜があるようにも読めておもしろい。
 生理があるなしと男があるなしは全然関係ないのにね。でも、心情的に妙にリアル。

生まれ変わったら 平平之信
 (狭義の)ショートショートの読後感だった。この話には、人の業やら残忍な殺しの場面やら女の執念やら、いろんな怖さが含まれているけれども「そういうことね」と納得した途端に、抱えていた怖さも消散してしまった。
 余韻に浸ることはできなかったが、ショートショートとしてはとても好きな話。

禍犬様 加楽幽明
 はじめ犬に怖さを感じていたのだけども、人間にも疑いが沸いてくる過程が怖い。そこを絶妙に曖昧にしてあるところがまた怖い。
 「聖域」という言葉はどちらかというと、ヨーロッパ(キリスト教)的な語感なので、もう少し土着な雰囲気の言葉だったらもっと好みかな。

連子窓 新熊昇 ★
 これは好きだ。暁斎にどんな猫の絵があったか、浅学ゆえ具体的に思い当たらないのだけど、影と暁斎はちゃんと連想できた。えーと、なんてタイトルだったかな。コレだ。「浅田宗伯夫妻影絵」だ。
 河鍋暁斎を知らなくても、それなりに面白く読めるんじゃないかな。元ネタがあるときって、「知ってる人」に媚を売ったり上から目線の書き味になってしまったり、元ネタの枠に縛られすぎたりするけれども、これはそーいうのが感じられなかった。見習いたいです。
 書き手としても刺激を受けたけれど、とにかく単純に好きな作品だ。猫も暁斎もひどく色っぽく感じたのは、気のせいではないはず。

猫爺 西村風池
 こちらも猫と影。猫と影って相性がいいんだろな。私も書いたことがあります。猫と影。(笑)
 こーいう変わり者で近所で有名な老人って、噂が噂を、憶測が憶測を呼ぶものだけれども、これはそれが本当だった、むしろ噂以上だったってところがギョッとする。
 穿った見方だけども、猫好きは笑えない話かもしれない。いや、犬好きにも。猫爺のように精が吸い取られるってことはなくとも、動物を愛玩するあまり回りが見えなくなる人への皮肉にも読める。

お花さん 江崎来人
 お花さんを「気味が悪い」というお母さんは、お花さんの正体(?)を何かしら感づいていたのではないか。となんとなく思った。お母さんという生き物は、女の勘と母の勘と娘の勘、はたまた野生の勘をすべて持ち合わせた最強の存在だ。(なんじゃそりゃ。)
 でも、痛そうなだけだよね、鶏の脚で乳揉まれても。

 沢井良太
 ああ、やだな。「牛や豚や鶏ならいいのか」とちょっと思ってしまうことが。でもそれを気にしていたらこの話は楽しめないので、置いておいて。しかし「兎」という設定にしたのは正解だ。イノシシや鹿だったら、こうはならないもの。固定観念というか、多くの人が持つ既存のイメージをうまく利用して不気味さを演出してる。
 「夢オチ」でごまかした先生がどんな目にあったのか、そこをどれだけ想像できるかが、ポイントですね。兎の目と先生の首のキズの赤が、生生しい。
 ちなみに、私も首にキズがある。そのキズがうずくのでこーいう話はホントつらい。(褒めてます)

ネパールの宿 亀井はるの
 できることなら足を引っぱられる時の感触やら恐怖をもう少し詳しく書いて欲しかった。
 ネパール祈祷師の笑いかけた真意が気になるけども、異国の怪しげな人の雰囲気を端的に現していてマル。

山鳴る里 長谷部弘明
 傷心の女は、このあと山の秘密を明かそうとするのだろうか。やめておいたほうがいいよ!
 んー、もう少し主人公のフィルターを通した目線で語ってもよかったかな。三人称並の冷静さだ。主人公の心情が伝わってこそ、余韻が出てくる話だと思うので。

蚊帳の外 山本ゆうじ
 ここから怪異が始まるってところで終わっているのだけど、そこで何か期待感とかドキリとしそうな予感があるかというと、そうではなかった。うーむ。
 それにしても、旧かな遣いというのは難しいですな。だいぶ気を使って書いた形跡があるし大きなキズがあるわけではなさそうだけれども、ネイティブじゃないというか、ぎこちなさを感じてしまう。一時期だけれども近世の文章ばかり読んでいたことがあるせいか、かえって恥ずかしくて書けないんですよ、擬古文でも。人様の擬古文も活用とか接続の間違いさがししてしまうし。(ヤな奴だな)

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December 12, 2007

てのひら怪談2 感想その3

但し書き
 ・えー、このブログはhyo-tanこと五十嵐彪太の絵本中心レビューブログ兼読書記録置き場です。
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 ・自分のメモ用に、お気に入りに★印をつけてます。「良い」ではなく「好き」であることをご承知置きください。

てのひら怪談2レビューリスト(増えてきたねー。超短編勢がんばるねー。500文字の心臓の選評で慣れてるからだろか。にやり。)
 秋山真琴さん
 酒月茗さん
 松本楽志さん
 根多加良さん
 峯岸さん
 マンジュさん
 添田健一さん
 「てのひら怪談2」感想用ブログ

食卓の光景 添田健一
 お父さんへの愛情が溢れていて、なんだか添田さんのお人柄まで伝わってくるようなやさしい作品。
 見守ってくれる存在を暗示する黄色い目玉を食べちゃうのは、ちょっとドキドキする。(笑)

二〇〇七年度問題 久遠平太郎
 どちらかというと、コメディの印象。楽しく読んだ。もちろん、タイムリーな話だし、おじさんたちの胸中を察すれば切ないものもあるわけだけど、それはこうして感想を書くにあたって出てきた感想だ。普通に読むだけだったら、おじさんの気持ちまで慮りはしなかっただろう。それがいいのかわるいのか、ちょっと判断できないけども。

 我妻俊樹
 電話の使い方が秀逸。私は電話が苦手なので、客そのものより、出る前に切れた電話のベルに合わせて消えた、ということが怖かった。
 「母親」という存在の絶対的な感じと不可侵な気配もすごくよく出ていると思う。

気配 小林修
 なんだか不思議な作品だ。実話を語っているには、緊張感がないし、創作のイマジネーションが感じられることもないし。
 一番怖いのは、「あ、そ。」と読み飛ばされる危険があることか。

 武田若千
 疲れるなら、ついてこなきゃいいのに。(笑)電柱に引っ掛かけることをよく思いつくなぁ。くほう。
 今度武田さんに会ったら「くほう」と挨拶してみようかな。
 そうそう武田さんの手作り作品が、25日まで渋谷電力館で展示中ですよ。

伝手 島村ゆに
 死んだということを一切書かずにクルリと視点を変える見事さ。何事も、相手の立場になってみないとわからないことがありますよね……。

蜘蛛の糸 米川京
 こーいうパロディは書いていて楽しいだろうなぁ。読んでいても楽しかった。
 そんな楽しんじゃ、芥川に睨まれそう?!ってことが唯一の怖さか。(褒めてます)

夜泣きの岩 小出まゆみ
 この主人公が「友人」を友人と平気で言っているのが怖い。ホント怖い、この主人公。友人に何か恨みでもあるんだろうか。いや、その恨みが書いてあったら、この怖さは半減してしまうだろうな。理由がわかっちゃったら、主人公に情が入ってしまうもの。

カミソリを踏む 朱雀門出
 痛い痛い痛い。こーいう話でループさせるの、やめてほしい。(褒めてます)痛いしか感想が出てきません。痛い痛い。

迦陵頻伽─極楽鳥になった禿 春乃蒼
 卒論の時「かむろ」では変換されなくて「はげ」「はげ」と打つたび笑っていたのを思い出す。つか、これも「はげ」って打ってるんだが。
 これは、花魁と若さん、花魁と禿の物語に馴染みがない人にはややハードルが高いか。
禿はけなげでかわゆくて、若さんと花魁の恋路を助けちゃったりもするのです。でもまだ子供で。そんなイメージ。
 花魁の着物と迦陵頻伽の美しさが見事に重なる。目も眩むまばゆさであることよ。

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December 11, 2007

てのひら怪談2 感想その2

但し書き
 ・えー、このブログは絵本作家佐々木マキ氏のファンサイト内コンテンツで、hyo-tanこと五十嵐彪太の絵本中心レビューブログ兼読書記録置き場です。
 五十嵐の創作関連個人サイトは別にあります。

 ・自分のメモ用に、お気に入りに★印をつけてます。「良い」ではなく「好き」であることをご承知置きください。

デウス・エクス・リブリス 君島慧是 ★
 怪談大賞投稿時から、気に入っていた作品。「本」に対する愛情溢れる一作を本で読むのは、もっとすばらしい。
 ほとんどイメージの説明に終始しているけれども、つっかかることなく鮮やかに想像できる。

幽霊画の女 田辺青蛙
 与太郎風な雰囲気もある弟が好い味を出している。
 にしても、出だしが好き過ぎる。(笑)膠ってウサギとか牛の皮だよね。すずめ。ちょっとそこいらで捕まえて煮ました的な雰囲気が、幽霊とヤってしまったより怖い。
 ラストはちょっと疑問が残る。勢いでヤっただけでこんなに情が移るかな。

 松本楽志
 キモイは痒いは熱いは痛いは怖いは、もう!
 公園の真ん中の赤いブランコのイメージが、すばらしくがくしさん。(?)なんにも描写がないのに、ひどく「臭う」作品だ。

もんがまえ 行一震
 タイトルをはじめ、小技が効いていると思うけれど、「怪談」として読みたい話ではない。では何で、と言われると困るけども。

のぼれのぼれ 仁木一青
 既読感があるのだけど、それは置いておいて。
 素知らぬ顔でタイミングを計り、階段の隙をつく小池くんの冷静さがなんとも魅力。
 子供が階段と騙しあう怪談。失敬。

灯台 牧ゆうじ
 魅力のある光景だけれども、今一つ雰囲気を出し切れていないような気がする。
 この内容ならば、不気味さや切なさはもちろん、血の匂いや波の音なども出すことができるはずだと思うのだけど。

磯牡蠣 有井聡
 怖いのはバカ牡蠣ではない。語り手が「知らずに食べている観光客を軽蔑した目で見ている」ことだ。自分たちが差し出して食わせておきながら。
 人間のいやな面をするっと書いてあるのがうまい。

白髪汁 間倉巳堂
 ぎゃあぎゃあ。グロテスクに徹していて、脱帽。
 こんな気持ち悪いもの、書く気がしれない。(褒めてます)

焼き蛤 金子みづは
 死んだ男の借金に追われながら、おおらかな女たち。女の人のしなやかな強さややさしさが描かれた作品は、好きです。
 少し遠慮したお父さんがかわいい。


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December 10, 2007

てのひら怪談2 感想その1

但し書き
 ・えー、このブログは絵本作家佐々木マキ氏のファンサイト内コンテンツで、hyo-tanこと五十嵐彪太の絵本中心レビューブログ兼読書記録置き場です。
 五十嵐の創作関連個人サイトは別にあります。

 ・怪談を自覚的に読んだことはほとんどないので、「どこに怖さを感じたか」を意識して読んでみました。もちろん怖さを感じなかったものもありますが、それが怪談じゃないというわけではありません。
私が単にニブチンなだけという場合もあるし、怖くない怪談だってあっていいのです。
 つまり、(怖かった場合)己がどこにどんな怖さを感じたかに関心を寄せようとしてみた、ということです。

 ・要するに、かなり個人的で感覚的な感想になってます。

 ・自分のメモ用に、お気に入りに★印をつけてます。「良い」ではなく「好き」であることをご承知置きください。

赤き丸  クジラマク
 ともかく草間弥生なタクシーのインパクトが大。(笑)それからモニター越しに見るピエロたちも。
 怪異で可笑しい光景なのだけれど、中年の悲哀が滲み出ている。
 Yさん夫妻を一瞬でも卑下した自分が、一番怖い。

シャボン魂 岩里藁人 ★
 最後の鮮烈なイメージをより強力にするタイトルが見事。
 大人になった主人公が回顧する形式で描かれているためか、子供の死への切なさややりきれなさが現れていて哀しい。

呼び止めてしまった 根多加良
 「僕」が抱えた強い憤りに圧倒されるのと入れ代わり、健一に対する違和感がクレッシェンドしていった。
 笑いが消えた健一は、どんな顔になったのか、いくつも想像してみた。どれも恐ろしくて寂しい。

水恋鳥 阿丸まり
 情けないが一読目は気が付かなかった。水恋鳥イコール三谷のばあさんの一人息子、と読めるように書いてあるのだな!水恋鳥に「水、くれてやりィ」というばあさんの母心。切ないと同時に一人息子の人柄に思いを馳せると怖い。
 水恋鳥のエピソードは昔話にある話らしいのだけれども、これを「フレフレ」と呼ぶのにも、由来があるのかしらん。

未練の檻 都田万葉
 女のどろどろしたものが、かなりきつく書いてあるので、好みで言えば苦手な類。
 イメージが豊かだけれども、それを文章で説明するのに精一杯な感じを受けた。ただ、なぜか膨張した血が金魚となるイメージには、何かしら納得するものがある。

深夜の騒音 宮間波
 ど、どうしよう。ライダーの正体が読めねえ。これがわからないと意味ないじゃん。
 しかし、ひらがなで書かれた擬音が耳に悲しくうるさくて、見事。

赤地蔵 狩野いくみ
 お館様は一体何をしでかしたのだろう。もちろんいい話であるはずはないが。
 この若様の母上の描写が欲しかったかな、とも思った。巧い文章で、わかりにくさはないが、色々背後のエピソードの説明があっても霞む話ではない。もう少し長い尺がふさわしいのではと思う。

石がものいう話 高橋史絵
 「周氏、愚かなり!」は、もうちょっとピッタリの台詞があるんじゃないかと思った。つまり嫉妬と恨みをはらそうとする女の台詞が「愚か」ということにちょっと引っ掛かったのだ。
 執念深い女の恨みを石で具現化しているのは、巧い。石のように固い遺志。ごめん。

阿吽の衝突 暮木椎哉
 ニコ坊とオコ坊@おじゃる丸みたいだ。満願神社もボロボロだし。
もっとも、狛犬ツインズが衝突しても「がちん、がちん、」ではないだろうけど。
 母さんの呑気さがいい具合です。

石に潜む 白ひびき
 教訓めいた話だ。水入り瑪瑙を選んだら、本当に「生」だったろうか、と疑ってみる。(笑)どちらにしろ、欲をかき過ぎるとロクなことはないですな。
 老人の正体がはっきりしないところがよい。仙人でもあり、死神でもあり、といったところか。


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